日米両政府は1日、エネルギー安全保障を議論する担当局長級の枠組み「日米エネルギー安全保障対話」の初会合を経済産業省で開いた。会合では、再生可能エネルギーの導入拡大や次世代原子炉の「小型モジュール炉(SMR)」の開発で日米が緊密に連携することで一致した。
会合の冒頭、経産省の南亮首席国際カーボンニュートラル政策統括調整官は「幅広いエネルギーの問題で議論したい」と呼びかけ、これに対し、ジェフリー・パイアット米国務次官補(エネルギー担当)は「日米で手を携え、エネルギーのトランジション(移行)でも協力したい」などと応じた。会合は冒頭を除き、非公開で約2時間行われた。日米両政府は今後も定期的に会合を行う方針。
また、会合後の会見でパイアット氏はロシア産石油の価格上限設定を巡る欧州連合(EU)の議論について「合意がなされると自信を持っている」と述べた。
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米国務省のパイアット次官補(エネルギー担当)は1日、次世代原子炉の小型モジュール炉(SMR)の国際展開で「日本は不可欠なパートナーだ」と述べ、日本企業の参画に強い期待を示した。ロシアによるウクライナ侵略を受けて各国が調達を争う天然ガスについては、対日輸出拡大に向けた米国の増産に自信を示した。
パイアット氏は都内で産経新聞の単独インタビューに応じ、ロシアがプーチン大統領のもと燃料輸出を「武器化した」と非難。日本との協力拡大が「極めて重要だ」とした。
米政府は原発を脱炭素化の重要電源と位置づけ、ルーマニアなど新興国へのSMRの輸出に力を入れている。米国のSMR開発に多くの日系企業が参加。同氏は「日本企業は原子力分野の調達網で極めて重要だ」と述べた。ロシアが燃料の輸出停止を揺さぶりの材料としたことで、「欧州各国が脱炭素化の動きを加速させた」と指摘。東欧を中心にSMR導入への関心が高まっていると話した。
国際市場の混乱で液化天然ガス(LNG)争奪戦の様相が強まった。パイアット氏は、承認済みの計画が実行されれば米国の産出が「倍増する」とし、関連事業に参加する日本企業を通じて対日輸出も増えていくとの見通しを示した。
日本が参加するロシア資源開発事業「サハリン2」については、「それぞれの国が判断すべきことだ」とした。ただ、ロシアがエネルギー市場で信頼を失い、「やがて日本の調達でもロシア産が占める割合は減っていくだろう」と述べた。(塩原永久)