世界平和統一家庭連合(旧統一教会)問題を巡る被害者救済法案が固まった。
法案は憲法が保障する財産権との兼ね合いがある上、急場しのぎで作成するなど、完璧とまでは言い難い。
与野党間には隔たりも残っているが、被害者の救済は急務である。まずは早期に成立させ、救済に乗り出すべきだ。できるだけ多くの被害者を救済できるように柔軟に対応し、不断の見直しを通じて残された課題についても改善を図ってもらいたい。
法案は、霊感で不安をあおるなどの不当な勧誘行為で「寄付者を困惑させる」ことを禁止し、国の命令に違反した場合は、1年以下の拘禁刑や100万円以下の罰金を科す。困惑して寄付の意思表示をした場合は、意思表示を取り消すことができる仕組みだ。
立憲民主党などの野党がマインドコントロール下での寄付の禁止を求めていることを踏まえ、寄付を勧誘するときの配慮義務の規定も設ける。「自由な意思を抑圧し、寄付をするか適切な判断をすることが困難な状況に陥ることがないようにする」と明記した。
故意または過失によって相手に損害を発生させる民法上の「不法行為」の認定や、損害賠償請求を容易にする狙いがある。
マインドコントロールの定義は難しく、禁止規定に盛り込むのは無理があろう。野党の意向を汲(く)みながらも、配慮義務としたことに野党は反発している。だが、裁判で不法行為を立証する根拠となるなど、明文化した意義はある。
宗教法人などに寄付した人が扶養する子供や配偶者による、寄付の取り消しも可能とした。
ただ、これらの規定で幅広く救済できるかは見通せない。信者本人が使命感で自発的に献金したり、信者である親が高額献金したことで子供が生活苦に陥って、裁判費用を用意できないことなども考えられる。
法案には施行後3年での見直し規定もある。必要に応じて機動的な見直しが欠かせない。
何より重要なのは、被害者が容易に相談でき、十分な支援を受けられる体制を着実に構築することだ。法案には、日本司法支援センター(法テラス)と関係機関との連携強化や相談体制の整備も盛り込まれた。被害者が路頭に迷うことのないようにしてほしい。