旧統一教会は「抜け穴探す」と元信者の牧師訴え 救済新法閣議決定でも警戒

旧統一教会の元信者である日本基督教団・白河教会の竹迫之牧師(本人提供)
旧統一教会の元信者である日本基督教団・白河教会の竹迫之牧師(本人提供)

世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の問題を巡り、被害者救済のための新法が閣議決定された。寄付の勧誘に関し、「信者の自由な意思を抑圧しない」などの配慮規定が設けられたが、元信者らは複雑な思いを抱える。元信者で日本基督教団・白河教会(福島県白河市)の牧師、竹迫之(たけさこ・いたる)さん(55)は教団から脅迫や暴行を受け、脱会後も長らく〝後遺症〟に苦しんだ。自身の壮絶な経験から、新法について「統一教会側は直ちに抜け穴を探そうとする」と警戒する。

「人生勉強するサークル」と勧誘

入信のきっかけは日常生活の中で訪れた。

「自分たちは映画を見て人生の勉強をするサークルです」。竹迫さんが17歳の高校3年時、大学受験の帰り道にこう声を掛けられた。映画監督を夢見ていたが、当時、ビデオレンタル代は高額で、「映画が月2500円の会費で見られる」ことに魅力を感じた。

勧誘時に旧統一教会の名前は出なかったが、紹介された場所は旧統一教会の「ビデオセンター」。浪人生となり、予備校に通いながら足を運ぶように。鑑賞できる映画は『十戒』や『天地創造』など聖書に関するものが多かった。

「聖書の知識がないと分からないでしょ。聖書の勉強をしてみない?」。こんな誘い文句につられて教義をたたき込まれ、3カ月が過ぎた頃に初めて旧統一教会だと明かされた。「当時は自己評価が低く、『選ばれてここに来た』といわれたときは衝撃を受けた」

誤解から脅迫電話、暴行も

信者として布教活動を続ける中、心配した親が牧師とともに説得に来た。信仰を続けるつもりで、その場では「脱会する」と説明したところ、誤解した教団側から脅迫電話などが掛かってきた。釈明に向かった先で、信者らから暴行を受けたこともあったという。

「当時は世界平和のためには違法行為もある程度仕方ないと考えていた。だけど、自分が標的にされるとは思わなかった」

教団に戻れずにいた竹迫さんは、聖書に救いを求めた。さらに、親が連れてきた牧師の勧めで東北学院大キリスト教学科へと進学、牧師の道を選んだ。

情報統制と集団心理

竹迫さんの入信当時、マインドコントロールという概念は世間に浸透していなかったが、振り返れば、思い当たることはいくつかある。

一つは情報統制だ。竹迫さんによると、最初は「聖書の勉強をしているなどと言ったら誤解される。なるべく秘密にするように」と言い含められ、次第に「外部の情報はサタンが入る要因になりかねない」など外部情報から遠ざかるように促されていった。竹迫さんは昭和61年に脱会したが、同年4月に起きたチェルノブイリ原発事故のことさえ知らなかったという。

また勉強会などで「神に身をささげる決意があるなら手を挙げて」と問われて次々と手を挙げる周囲の雰囲気にのまれ、竹迫さんも続いた。「あの集団の中にサクラがいたのだろう。集団心理のままに操られていた」と思う。

被害「お金の次元を超えている」

脱会から10~15年ぐらいは、「脱会したせいで不幸が起きているのでは」という考えにさいなまれ、「後遺症を引きずっていた」と打ち明ける。

牧師となり、苦悩する2世信者ら100人以上の言葉に耳を傾けてきた。新法に関し、竹迫さんは「基本的に寄付の強要を問題視しているが、統一教会は長い時間をかけて信者を信じ込ませ、信者らは自発的に献金している。(寄付金を募る)メカニズムへの考え方が抜け落ちれば、新法で適用される事例は少ないのではないか」と危惧する。

また、「被害の実態は、お金の被害が回復されればそれでよい、という次元をはるかに超えている可能性がある」とし、宗教2世らへの精神的ケアといった対策も求めた。(吉沢智美)

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