初の連合チーム甲子園出場なるか 快進撃を続ける「宮津天橋・丹後緑風」の秘密

体育館で紙の球などを使って打撃練習する宮津天橋高の選手たち=11月23日、京都府与謝野町(嶋田知加子撮影)
体育館で紙の球などを使って打撃練習する宮津天橋高の選手たち=11月23日、京都府与謝野町(嶋田知加子撮影)

来春の第95回選抜高校野球大会の21世紀枠候補校として、京都府高野連の推薦に「宮津天橋・丹後緑風」の連合チームが選出された。両校合わせて選手わずか15人だが、秋季京都大会でいずれも甲子園出場経験がある京都外大西、福知山成美を破って8強入りの快進撃をみせた。連合チームとして甲子園出場を果たせば史上初。選手たちは聖地を目指し、練習を積み重ねている。

いきなりの快進撃

「8強進出で可能性があるのは知っていたが、当初は1勝しようという感じだったので、正直びっくりしているというのもある」。21世紀枠候補校の選出に思いがけない様子をみせるのは、京都府立宮津天橋(宮津市、与謝野町)と府立丹後緑風(京丹後市)との連合チームを率いる守本尚史監督(56)だ。

連合チームがスタートしたのは今年7月。秋季京都大会では初戦で同志社国際を破ると、京都外大西、福知山成美と強豪を撃破。準々決勝は龍谷大平安に0-10でコールド負けしたが、8強進出で期待は一気に高まった。京都府高野連は人口減少地域で地元の希望となったことなどを評価し、府の推薦校として初めて連合チームを選出。2年前には富山県高野連が連合チームを推薦したことがあるが、最終選考で落選。今回出場が決まれば、連合チーム初の甲子園出場となる。

連合チーム「宮津天橋・丹後緑風」を率いる守本尚史監督。普段は宮津天橋高校宮津学舎の教諭だ=京都府与謝野町 (嶋田知加子撮影)
連合チーム「宮津天橋・丹後緑風」を率いる守本尚史監督。普段は宮津天橋高校宮津学舎の教諭だ=京都府与謝野町 (嶋田知加子撮影)

守本監督は1999年、故・野村克也さんの出身校で知られる峰山の監督時代に選抜大会へ導いた。京都府工監督時代の2010年には春季京都大会を制している。京都府工時代には50人近くの部員を率いたこともあるが、今は有力な選手が他地域へ流れるなど両校の部員は不足。現在の選手数は宮津天橋が8人、丹後緑風は7人しかいない。

チーム作りについて「できることの確率を高めていく。足の速い子がいないのに走れるチームになれといってもできない。出た走者は確実に送るとか、ヒットエンドランは転がすとか、共通認識を図りながらやっていった」と話す。

練習は困難の連続

連合チームの2校はそれぞれ20年に再編された統合校。宮津天橋は宮津と加悦谷(かやだに)、丹後緑風は網野と久美浜との統合校だ。各校舎を「学舎」として4つとも存続させ、独立した教育を行う「学舎制」が導入されている。

そのため、練習環境にも困難が伴う。宮津学舎と加悦谷学舎の距離は10キロ以上。バス移動で約30分かかる。また、久美浜学舎には現在部員がおらず、連合チームとしての練習は宮津、加悦谷、網野のいずれかの学舎に集合して練習するが、宮津学舎と網野学舎は約30キロも離れており、選手の移動や道具運搬などは保護者らの協力なくしてできない状況だ。

実戦形式の練習では引退した3年生部員に参加を頼んだり、ポジションを空けたまま練習したりもする。守本監督は「夏休みはコロナや熱中症などで15人全員がそろったのはほとんどない。練習試合も全員そろってできた日はなかったが、試合ができるだけでもありがたかった」と振り返る。

ただ、連合チームならでのメリットもあった。不在のポジションを補えただけでなく、スタッフも充実。宮津天橋、丹後緑風のそれぞれのエースだった3年生2人は大学でも野球を続ける予定で、貴重なコーチ役を務めている。連合チームのエースで宮津天橋の中川優(2年)は、丹後緑風のエースだった3年生からシンカーを伝授された。持ち球のフォークボールが決まらなかった福知山成美戦について「シンカーが救ってくれた。僕を成長させてくれた球種」とうなずいた。

チームを率いるのは守本監督だが、バッテリー指導は丹後緑風の斎藤進吾監督に任せた。斎藤監督は捕手として福井商で甲子園にも出場。守本監督は「宮津天橋の選手たちも刺激になったし、連合チームとしてもレベルアップした」。指導する側も違う高校の選手にはいつも以上に力が入った。「結果的に同じことを言っているのかもしれないが、選手も新鮮な気持ちで聞けたと思う」と話す。

連合チームの主将でもある宮津天橋の今井琢己選手(2年)はチームのスローガンとして「責務徹底」を掲げる。

「人数の少なさを言い訳にせず、自分の役割に責任を持ち、それぞれ全うすることが大切」。チームとしての日は浅いが「みんなが責任感を強く持つようになった」と手応えを口にした。

保護者の支えは必至

大阪府では今、府立高の部活動について、少子化による部員不足の解消や教員の負担軽減などを目的に、来年度から近隣の学校同士で合同実施する案が挙がっている。宮津天橋と丹後緑風の連合チームは、そうした取り組みに成功した一例になりうるかもしれない。ただ、大阪府の案は基本的に自転車で15分以内の場所にある高校が対象だが、京都府北部の場合は学校間の距離があり、移動などで保護者への負担が大きい。

だが、地元でも野球ができる証しとなった連合チームの躍進は、地域にも希望を与えたことだろう。「朝、校門に立っていると、散歩している人が『よかったですね』と声を掛けてくれる。地域の方々が本当に喜んでくれている」と守本監督は笑顔で話す。

今後は都道府県の推薦校の中から12月9日に地区推薦候補校9校が決まり、来年1月の最終選考で21世紀枠の3校が決まる。主将の今井は「僕らしかできない成長理由があるのはとてもありがたいこと。恥ずかしいプレーはできない」とさらなる成長を誓っている。(嶋田知加子)

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