国内最大級のサーモン陸上養殖場が始動 富士山麓、6年半ば出荷

陸上養殖された欧州産のアトランティックサーモンとそれを使った料理
陸上養殖された欧州産のアトランティックサーモンとそれを使った料理

サーモンの中でも品質が高いとされる「アトランティックサーモン」の国内最大級の陸上養殖施設「富士小山養殖場」が静岡県小山町で操業を始めた。卵から育てて令和6年半ばから出荷を開始し、9年には年間5300トンの出荷を見込む。アトランティックサーモンは刺し身やすしネタとして人気があり、出荷から10年間は丸紅が国内で独占販売する。

水の循環システムを取り入れた同養殖場を運営するのは、ノルウェーの養殖業者プロキシマーシーフードで、昨年5月に着工。卵から100グラムの稚魚まで育てる「孵化(ふか)・幼魚場棟」が完成し、10月下旬に稼働を始めた。孵化後、2グラムまでの稚魚を育てる直径3.5メートルの水槽が8個、2~100グラムの稚魚を飼育する同7メートルの水槽が10個ある。2グラムから100グラムに育つのに10カ月程度かかるという。第1弾として病気がないことが確認された卵約12万個をアイスランドから輸入、施設に搬入した。

来年6月末までに、水揚げサイズとなる4~5キログラムのアトランティックサーモンを育てる「育成場棟」を完成させる。同棟には直径18メートルの巨大水槽22個と、それより小さい同11メートルの水槽12個を設置する。この棟で1年かけて成長させた後、6年半ばから出荷を開始する計画だ。

施設は大和ハウス工業が小山町に整備した工業団地内にあり、敷地面積は約5万6700平方メートル。建物2つの延べ床面積は約2万8000平方メートルで国内最大級となる。同社が建物の設計・施工を担う。

卵から孵化した稚魚を2グラムの大きさまで飼育する水槽=静岡県小山町
卵から孵化した稚魚を2グラムの大きさまで飼育する水槽=静岡県小山町

プロキシマーは、富士山の豊かな伏流水を活用して養殖でき、首都圏に近く、高い鮮度を保ちながら消費者に届けることができることから立地を決めた。総投資額は出荷開始までに180億円を見込んでいる。

プロキシマーのヨアキム・ニールセン最高経営責任者(CEO)は「将来はアジアなどへの輸出を目指し生産力を増強する」としている。

アトランティックサーモンの国内需要は年間約6万トンに上るが、海での養殖に適したノルウェーやチリなどからの輸入に依存する。陸上養殖は初期投資や電気代などコストがかかるものの、場所や漁業権の制約が少ない。天候と季節の影響を受けず、定期的な出荷が可能になる。国内の陸上養殖の場合、輸送費を抑えられ、為替変動リスクが少ないなどの利点もある。

国内でのアトランティックサーモンの陸上養殖は、プロキシマー以外にも伊藤忠商事が来年以降の出荷に向け三重県で養殖場を建設中だ。また、別の種類の「トラウトサーモン」の陸上養殖を三井物産グループが千葉県で行っている。(遠藤一夫)

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