ローカル線、厳しさ変わらず 実情踏まえた議論加速を

小奴可駅を出発し備後落合駅に向かうJR芸備線の昼の列車=5月、広島県庄原市(桐原正道撮影)
小奴可駅を出発し備後落合駅に向かうJR芸備線の昼の列車=5月、広島県庄原市(桐原正道撮影)

JR西日本が公表した令和元~3年度平均のローカル線の収支状況からは、地方の路線をめぐる厳しい実態が改めて浮き彫りになった。住民の足を守るためどのような施策が必要なのか、鉄道事業者と自治体は地域の実情を踏まえつつ、議論を加速する必要がある。

「地方路線は沿線人口の落ち込みがほかの地域より厳しく、今後の経営悪化はより早く進む」。今回の発表を踏まえ、JR西の担当者は厳しい見方を示した。

今回の発表では赤字総額が若干改善した。新型コロナウイルス禍を受け、JR西が路線の運休や人件費の削減などによるコスト圧縮を進めたためだ。

ただ、個別の区間をみると、平成29~令和元年度とくらべ、半数を超える16区間で、本業で稼げるかを示す営業損益の赤字幅が拡大。営業費用に対する運輸収入の割合を示す収支率は28区間で悪化した。100円を稼ぐのにいくら費用がかかったかを示す営業係数は、芸備線の東城―備後落合間が2万3687円と、平成29~令和元年度と同じく、突出して悪かった。

関西大の安部誠治教授(交通政策論)は「100円を稼ぐのに千円以上かかる路線をいち民間企業が維持することは不可能」とした上で、「自治体は公共交通機関は地域の維持・発展に不可欠という意識を持ち、その存続をめぐる議論に主体的に関わる必要がある」と強調する。

だが、鉄道維持を求める自治体と、存廃を含めた議論を進めたいJRの間の溝は深い。

芸備線の一部区間については、JR西と沿線自治体などでつくる検討会議が11月2日、同社が求める存廃を含んだ議論をしない方針を決めた。これを受け、同社は国土交通省に協議への関与を要請。念頭には、鉄道事業者や自治体の要請で存廃を議論する協議会を国が設置する新しい仕組みの活用がある。

関西大の安部氏は「路線によっては周辺に温泉などの観光地があるなど、収益改善策を実施しやすい路線もある。その実態を誰よりも理解しているのは自治体。積極的な議論参加が必要だ」と主張。ローカル線のあり方の検討を急ぐべきだとしている。(黒川信雄、井上浩平)


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