12月8日開催 ベンチャー支援『第22回 Japan Venture Awards(JVA)』 『JVA 2021』審査委員会特別賞 unerry(ウネリー)・内山英俊社長 人流データとつくる、より良い未来社会

うちやま・ひでとし 米国ミシガン大学院でコンピューターサイエンスを学び、AIエンジニアとして勤務。外資系コンサルティング会社で事業戦略・企業再生を手掛けるなどし、2015年unerry創業。業界団体LBMA Japan理事を務めるなど位置情報業界の発展にも努める(松井英幸撮影)
うちやま・ひでとし 米国ミシガン大学院でコンピューターサイエンスを学び、AIエンジニアとして勤務。外資系コンサルティング会社で事業戦略・企業再生を手掛けるなどし、2015年unerry創業。業界団体LBMA Japan理事を務めるなど位置情報業界の発展にも努める(松井英幸撮影)

革新的な事業を展開するベンチャー企業の経営者をたたえる『Japan Venture Awards(JVA、ジャパンベンチャーアワード)』(主催・独立行政法人中小企業基盤整備機構=中小機構)。アイデアに富んだ起業家らが集い、創業機運を盛り上げる表彰制度として知られている。今年の『第22回 JVA』は12月8日、東京都港区の虎ノ門ヒルズフォーラムで開催予定。オンライン視聴の申し込みを受け付けしている。

昨年3月の『JVA 2021』で審査委員会特別賞を受賞したのは、位置情報マーケティングを手掛けるunerry(ウネリー、同港区)の内山英俊社長。人流ビッグデータに人工知能(AI)解析を加えた〝環境知能〟を追求し、消費・購買行動促進や混雑回避といったニューノーマル対応、暮らしの快適性や利便性を創出するスマートシティ構想などを具現化している。

内山社長が社名に込めた時代の〝うねり〟とは何か。医療や宇宙、ゲノム、グローバル…。JVAに集うベンチャー経営者の多様な視点と未来を切り開く力の一端を紹介する。

⇒『第22回 Japan Venture Awards(JVA)』の詳細はこちらへ

未来切り開く人とアイデア集うJVA

『JVA 2021』で表彰を受けた経営者ら(左)。表彰式では、ニューノーマル時代の産官学連携によるグローバルベンチャー創出をテーマにしたパネルディスカッションなども行われた。内山英俊社長は審査委員会特別賞を受賞した(中小機構提供)
『JVA 2021』で表彰を受けた経営者ら(左)。表彰式では、ニューノーマル時代の産官学連携によるグローバルベンチャー創出をテーマにしたパネルディスカッションなども行われた。内山英俊社長は審査委員会特別賞を受賞した(中小機構提供)

JVA、ジャパンベンチャーアワードは、潜在成長力の高い事業を行う経営者をたたえる表彰制度で、2000年から開催している。次世代のロールモデルとなるベンチャー経営者らにスポットを当てることで、日本での創業機運を醸成している。

創業から概ね15年以内の経営者が対象で、経営者の資質や成長性、革新性などの観点から審査。これまで、多彩なジャンルの企業の経営者ら328人が、経済産業大臣賞や科学技術政策担当大臣賞などの各賞を受賞している。また、ベンチャー企業の発掘・育成に貢献したベンチャーキャピタリスト(VC)の表彰も行い、起業に関わる総合的な情報発信や交流の場にもなっている。

中小機構は、「応募者の年代層も20~70代まで幅広く、多様性に富んだベンチャー経営者の発掘につながっている。近年では特に社会課題の解決と結びついた事業への注目が高い」と指摘する。

その代表例が『JVA 2021』で審査委員会特別賞を受賞したunerryの内山英俊社長。人の動きを可視化した〝人流ビッグデータ〟を活用し、小売店や商業施設などでのマーケティングや広告のみならず、新型コロナウイルス感染拡大の中で混雑回避といったニューノーマルの浸透に貢献し、注目を集めている。

データで安心安全な分散参拝を実現

令和四年御開帳 中日庭儀大法要。七年に一度の貴重な機会に636万人が参拝した(善光寺提供)
令和四年御開帳 中日庭儀大法要。七年に一度の貴重な機会に636万人が参拝した(善光寺提供)

長野市の善光寺で今年4~6月に開催された国重要文化財・前立本尊の御開帳。七年に一度の盛儀に、636万人が訪れたと推計されている。コロナ禍が長引く中での実施となり、善光寺がミッションの一つとして掲げたのは、安心・安全を守る分散参拝だった。

この実現に一役買ったのが、unerryのサービス「カスタマイズ混雑マップ」。境内のリアルタイム混雑状況の可視化と情報提供を特設サイトで行った。

分配参拝を促進したunerryの創意工夫がつまった混雑ヒートマップ(同社提供)
分配参拝を促進したunerryの創意工夫がつまった混雑ヒートマップ(同社提供)

本堂や山門など境内5カ所にunerryが開発したIoTセンサーを設置。設置場所ごとに指定した範囲内の人数を計測し、結果を基にAIが混雑度を「通常より混雑」「通常程度」「いつもより空いている」の3段階で推定。その情報を、混雑ヒートマップという図表で、分かりやすく表現した。

内山社長は、「長い歴史を誇る善光寺の御開帳に、創業から7年しか経過していない会社が役にたてた。それが次の歴史につながっていく。挑戦的な試みだったが、『この時間は回避しよう』『別の所に立ち寄ってから行こう』というふうに参拝者のみなさまの行動につながったはず」と振り返る。善光寺も「説得力のあるデータになっていた。歴史ある寺だからこそ、新しいことを取り入れ、次につなげていきたい」と評価している。

⇒善光寺御開帳での取り組みは、unerryのホームページへ

人流ビッグデータ活用「1%も開拓していない感覚」

内山社長の起業家としての原点にあるのは、米国・ミシガン大学院での留学生活だという。コンピューターサイエンスを学ぶ一方で、AIエンジニアとして研究所に勤務。さらに周囲は〝ドットコムバブル(インターネットバブル)〟と呼ばれるほどにIT関連ベンチャーの起業ブームだった。

「実際に仲間とともに今でいうスマートフォンをつくったのですが、木っ端みじんに失敗。しかし、一人のエンジニアやクリエーターが世界を変えうると気づいた。多くの方から支援されて学ぶことができ、経験を次世代につないでいくことが重要なのではないか。大企業で何かをするのではなく、自分自身が何かをしなければと思った」という。

unerryは2015年の創業以来、リアル行動ビッグデータとAI解析を駆使し、社会における人の動きを可視化するサービスにこだわってきた。創業から3年は「何の価値があるのか」「成功するとは思えない」と厳しい声が耳に入った。

最初の転機が訪れたのは2018年。小さな成功事例の積み重ねから、業務の柱を〈分析可視化・広告・システムソリューション〉の3点に集約することで、成長路線に。そして、新型コロナウイルスの感染拡大を背景に、世の中の関心が〝人流〟に集まった。

起業してから今年8期目。この10年で起業を取り巻く環境も変化し、投資環境もよくなり、若い世代のベンチャー起業への関心も高まった。さまざまな技術開発が進み、ビジネスのフィールドは日本のみならず世界にある。unerryが見据える事業も、国内の小売りや商業施設の広告などだけではなく、国や地域を超えたスマートシティ実現など広がっていく。人流データの可能性について、「1%も開拓していない感覚がある」とさえいう。

unerry(ウネリー)という社名には、世の中に新しいうねりを作るという気概を込めた。リアルの社会を人流ビッグデータとして可視化することによって、社会が〝賢さ〟を備える環境知能を追求する。人の行動をより深く理解できれば、店の品ぞろえや届ける情報、交通機関など街の機能もより良く変化していくことができるはずだ。

「目指すのは、unerry, everywhere。どんな店や街に行っても、環境知能が実装されている。unerryのサービスがそこにあること」と話す内山社長(左)。「ベンチャーで働いていると、まだまだ周囲から、『大丈夫?』と心配されることも。JVA受賞は、社員の励みにもなったはず」という
「目指すのは、unerry, everywhere。どんな店や街に行っても、環境知能が実装されている。unerryのサービスがそこにあること」と話す内山社長(左)。「ベンチャーで働いていると、まだまだ周囲から、『大丈夫?』と心配されることも。JVA受賞は、社員の励みにもなったはず」という

JVA受賞、圧倒的な信頼感に

昨年、「人流の可視化」を通じて社会課題の解決に貢献する起業・経営者のロールモデルとして、JVA審査委員会特別賞を受賞した。

内山社長は、「日本では毎年新しく13万~14万の会社が誕生しているといわれている。企業やお客さまにとって、信頼の判断は難しい。JVAのような制度に評価してもらえると、圧倒的な信頼感に結びつく。創業から3年は苦難の連続で、お前の会社なんて意味がないといわれてきた。認めてもらう瞬間を迎え、報われた気持ちになった」という。

表彰式の場にはさまざまな経営者が集まる。それぞれ違う個性と思ってはいても、行き詰まるポイントは似ているという。経営者としての悩みを共有し、意見交換することで会社のステージアップにつながるコミュニティーとしての価値も指摘する。

内山社長は、「AIエンジニアとして、今も月に300億件を超えるデータを見て、このデータが何に使えるのかと考える。社会の出来事とデータを掛け算することによって、思いつき(アイデア)が増え、提供サービスを生み出してきた。既存の社会システムは、生活者や大企業が形成してきた。起業を志す人たちは、一定量を壊しながら、新しい社会を作っていく社会的役割を担っている。既存の概念や社会システムに変に適応せず、むしろ、ひっくり返すという思いを持っていてほしい」と次世代へのメッセージを送った。

アストロスケールホールディングス・創業者兼CEOの岡田光信氏

【第22回 JVA】

12月8日午後2時15分から、東京都港区の虎ノ門ヒルズフォーラムで開催。「オープニングキーノートスピーチ」では、『JVA2020』で科学技術政策担当大臣賞を受賞し、人工衛星を打ち上げた際に使ったロケットの残骸などのスペースデブリ(宇宙ごみ)除去サービスに取り組むアストロスケールホールディングス・創業者兼CEOの岡田光信氏が登壇(写真)。ベンチャー企業を支援するベンチャーキャピタルと起業家がそろって登場する「VC×投資先ピッチ」では、ジャフコグループのチーフキャピタリスト・沼田朋子さんらが、パートナーシップについて話し合う。オンライン配信予定で、視聴希望者の受け付けを行っている。

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提供:中小企業基盤整備機構

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