動画クリエイター展

評論家・宇野常寛さん 動画は社会に浸透、より中心的な交流手段に

「21世紀は『動画の時代』。今の動画はコミュニケーションツールになっている」と語る評論家の宇野常寛さん
「21世紀は『動画の時代』。今の動画はコミュニケーションツールになっている」と語る評論家の宇野常寛さん

「20世紀は『映像の時代』で、21世紀は『動画の時代』」。急速に変化する現代の情報環境を、評論家の宇野常寛(つねひろ)さん(44)はこう表現する。東京・お台場の日本科学未来館で開催中の「動画クリエイター展」(同館、産経新聞社主催)に合わせ、動画配信が文化やコミュニケーションをどう変えたかを聞いた。

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「僕を含めた20世紀生まれの人間にとって映像は特別なメディア。(映画やテレビなど)訓練を積んだ人間が特殊で高価な機材を使い、作り込まれたものを表現する。映像は20世紀最大の総合表現の媒体として君臨していました」

批評誌「PLANETS(プラネッツ)」編集長などを務め、動画での情報発信も行う宇野さんはこう語る。その後、21世紀にはスマートフォンが発達。動画は「基本的に誰でも撮れるものであり、日常的なコミュニケーションツール」になった。

「例えば『かわいい犬が歩いていたよ』みたいな動画を気軽に友達に送ったりしますよね。21世紀初頭に素人の書き手がブロガーとして影響力を持ったのと同様に、動画のクリエーターも影響力を持つようになったのだと思います」

身近な話題から、政治など意見が分かれる話題まで。動画は「直感的でインスタントな情報を得られる装置」として、実社会にも影響を与えるようになった。そこで大きな役割を果たすのは、関連した動画が自動的に表示される「レコメンド機能」。宇野さんもこの機能がきっかけで「それまで関心の薄かったウミガメの動画を疲れたとき見るようになった」という。

この機能によって新たなクリエーターが台頭する土壌が育まれた一方、マイナス面もある。泡(バブル)に包まれたように自分の見たい情報しか見えなくなる「フィルターバブル」を、プラットフォームのレコメンド機能が加速するケースも多いという。その結果、宇野さんは「世論形成に関しては陰謀論の温床にもなっている」と指摘する。

動画が日常になったことで映像文化やポップカルチャーのあり方も変容した。

「映像の時代では、映画やアニメなどの作品は一つのパッケージで自己完結するものでした。今の動画はコミュニケーションのためのもの。品質より、ユーザーが感情の高まりを獲得できるかどうかが重要視されるケースもあります。むしろ、自己完結性は低い方がいい。隙間があることで余白も生まれますから」

ユーチューブは2005年にサービスを開始。宇野さんは「そろそろ社会の中心的役割を担うものに脱皮し始める時期だし、若者中心から現役世代のプラットフォームになっていく」と推測する。

対照的に、若者の間では、ティックトックをはじめとした「短尺」の動画投稿サイトが新たな文化圏を形成している。

「若者はもっと短尺でローコストに見られ、生理的に気持ち良いコミュニケーションをとれるプラットフォームに流れていく可能性が高い。動画は良くも悪くも社会に浸透し、より当たり前のものになっていくと思います」

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