点と点を結んだ「偽の遺書」 殺害認定の根拠に

大阪地裁=大阪市北区
大阪地裁=大阪市北区

2人の死を関連付ける証拠となったのは「偽の遺書」だった-。堺市で平成30年、インスリン製剤を投与して父親を、練炭自殺を装って弟を殺害したとして、殺人罪などに問われた足立朱美被告(48)に対し、大阪地裁(坂口裕俊裁判長)は29日、無期懲役(求刑死刑)を言い渡した。

弁護側は無罪を主張し、足立被告は認否を黙秘していた。坂口裁判長は、間接証拠から足立被告が2人を殺害したと認定したが、重要な証拠の一つとなったのが「偽の遺書」だ。

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「俺はおとんにインスリンを打った」「常に罪の意識から逃れることができへんかった」。弟の聖光(まさみつ)さん=が死亡した平成30年3月、こうした聖光さん名義の〝遺書〟が見つかった。

この約2カ月前、父親の富夫さんは低血糖状態で入院したが、死亡したのは同年6月。3月時点では治療中。医師は事件性を疑っておらず、警察も動いていなかった。このため、検察側は文書が「秘密の暴露的告白」にあたると主張し、誰が作成したのかが重要な争点となっていた。

この日の判決では、文書と同じ語句が実家内の事務所のパソコンで入力されていたことから、このパソコンが使われたと判断。さらに携帯電話の位置情報により、パソコンが使われた日に足立被告は事務所内にいた一方、聖光さんは別の場所にいたことが認められるなどとして、「足立被告が遺書を偽造した」と断定した。

量刑を検討する際も、聖光さん殺害は罪のなすりつけが目的で「巧妙で計画性が高い」と指摘。「1件目の殺人の後に一定の時間的余裕があり、犯行を思い直すことができたのに再び殺人に及んだ」と2つの事件の関連性が重視された。

ただ、富夫さんは末期がんを患っていたためインスリン投与が直接の死因になっておらず、聖光さん殺害も「ほかの死刑事案と比べて突出した悪質性があるとまではいえない」と極刑は見送られた。

判決によると、30年1月、堺市中区の実家で、富夫さんに多量のインスリン製剤を投与し、同年6月に死亡させた。同年3月には、聖光さんを睡眠薬で眠らせた上でトイレ内で練炭を燃焼させて一酸化炭素中毒により殺害した。

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