中国との「黄金時代終わった」 スナク英首相が外交演説 覇権主義に警戒

スナク英首相(ロイター=共同)
スナク英首相(ロイター=共同)

【ロンドン=板東和正】英国のスナク首相は28日、就任後初めて外交政策に関する演説を行い、キャメロン政権期(2010~16年)に進められた英中蜜月の「黄金時代」は「終わった」と断言した。英国の利益と価値観に挑戦する中国の動きが「深刻化している」とし、英国は中国への対応を変える必要があるとの見方を示した。

スナク氏は演説で、中国は世界で競争力を示すため「国家権力のあらゆる手段を用いている」と強調。「中国がわれわれの価値観と利益に体制上の挑戦を突きつけている」と述べ「(中国の)覇権主義が強まるにつれ、この問題はより深刻になっている」と指摘した。

「貿易が社会、政治改革につながるという考えに頼るべきではない」とし、「いわゆる『黄金時代』は終わったことをはっきりさせておく」と明言した。

27日に新型コロナウイルス対策への抗議活動を取材していた英BBC放送の記者が中国当局に暴行を受けたとされる事件を受け「中国政府は国民の抗議に耳を傾ける代わりに弾圧を選択した」と批判した。香港や新疆(しんきょう)ウイグル自治区での人権弾圧にも懸念を示した。

英国はキャメロン政権時代の15年3月、中国が主導するアジアインフラ投資銀行(AIIB)への参加を先進7カ国(G7)で最初に表明するなど、中国に急接近した。人権問題をめぐる対中批判も封印し、「英中蜜月」と評された。

香港や新疆ウイグル自治区での人権侵害を受け、ジョンソン政権は対中強硬路線に転換したが、英国では通信機器などで対中依存が強まっており、「『黄金時代』から脱却できてない」(英与党・保守党党員)との指摘もある。

スナク氏は今月28日の演説で「われわれは(中国やロシアといった)権威主義的な政権への世界的な依存を終わらせる」とし、日米などと経済安全保障分野での連携強化を目指す考えを示した。

一方で「世界経済の安定や気候対策において中国の重要性を無視できない」とも述べた。スナク氏は財務相時代に「中国は世界で最も重要な経済国の一つで、成熟した関係が必要だ」と発言しており、同氏が中国との経済関係を重視するとの見方もある。

スナク氏は演説で、ロシアによる攻撃が続くウクライナへの軍事支援の継続と拡大も表明。中露への対応を踏まえ、昨年3月にジョンソン政権が定めた安全保障の方針「統合レビュー」を更新し、新年に詳細を公表する考えを示した。

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