鑑賞眼

未来を開いていく若者の物語 劇団☆新感線「薔薇とサムライ2 海賊女王の帰還」

12年ぶりとなる石川五右衛門(古田新太、左)とアンヌ(天海祐希)の名コンビが復活した(田中亜紀撮影)
12年ぶりとなる石川五右衛門(古田新太、左)とアンヌ(天海祐希)の名コンビが復活した(田中亜紀撮影)

いい年の取り方をしている。劇団☆新感線の看板役者、古田新太が天下の大泥棒、石川五右衛門を、俳優の天海祐希が海賊出身の女王、アンヌを演じる「薔薇とサムライ2 海賊女王の帰還」は、前作から12年ぶりとなるまさかの続編。高田聖子、粟根まことら劇団員に加え、森奈みはる、早乙女友貴らおなじみのメンバー、石田ニコル、神尾楓珠、西垣匠という初参加の若手が絡み合い、まさに〝世代交代〟を感じさせる後味のいい大作となった。

【鑑賞眼】底知れないKERA・MAP

中世ヨーロッパを舞台に、近隣国に覇権を広げようとするソルバニアノッソ王国の女王、マリア・グランデ(高田)。自らの正当性を証明するため平然と他国を侵略する行為は、昨今の世界情勢もあってとてもリアルだ。

だが、なんといっても今作のリアルさは、前作からの現実と劇中の年月がほぼそのままリンクするところ。前作で海賊からコルドニア王国の女王となったアンヌは、持ち前のきっぷの良さに加え、慈愛をもって治世を行っている。美しく堂々とした立ち姿、五右衛門とのコミカルなやり取り、次々と変わる衣装。天海の魅力がたっぷり詰め込まれた1幕で十分満足だが、演出のいのうえひでのり肝いりという2幕冒頭のサプライズは、サービスにも程があるだろうと叫びだしたくなる。そんなアンヌは国の行く末に思いをはせ、能力がありながら女性であるため皇位を継承できない隣国の王女、ロザリオ(石田)を自らの後継者として目をかける。

一方の五右衛門にも、意外な〝後継者〟が現れる。母(マリア)におびえる内気な王子、マクシミリアン(早乙女)だ。得意の立ち回りをこれでもかと見せつけ、五右衛門へのあこがれから一気に開花するラストは見ものだ。

前作ではバタバタとあわてふためく様子が印象的だったエリザベッタ(森奈)もすっかり落ち着いた。しっとりした芝居にも定評ある森奈が、親友のアンヌを思って揺れ動く気持ちを情感たっぷりに演じた。

特筆すべきは、吟遊旅団として歌で物語をひっぱるカノーラ(山本カナコ)、ボセアル(冠徹弥)、グリトン(教祖イコマノリユキ)の3人。ベテラン勢の〝歌力〟とロックの生演奏は、否が応でもテンションが上がる。そこに、脱力感たっぷりの「ブルブルジュースの唄」が幕開けからたびたび挟み込まれ、おなじみの劇団員たちがコミカルに踊る落差が楽しい。

全編を通して、新感線とはかくなるものという期待を裏切らない仕上がり。料理人から宰相にのぼりつめたラスボスのボルマン(生瀬勝久)ら悪役の小者ぶりもお約束だ。五右衛門とアンヌを中心に据えながらも、これは未来を開いていく若者たちの物語。それはベテランが総出で若手俳優を引き立てていく、劇団の在り方とも重なる。

人はこの世に何を残せるのか。結局は「人」を残すしかない。前作の暴れっぷりからは少しおとなしくなったものの、年長者がしっかり責任を果たした。同じだけ年齢を重ねた観客の一人として、新橋演舞場の花道を駆け抜ける出演者に目頭が熱くなった。

12月6日まで、東京・東銀座の新橋演舞場。(道丸摩耶)

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