北川信行の蹴球ノート

Jリーグ、コロナと戦った3シーズンを総括…「満員」は取り戻せるか

マスクを着用しての応援だった2022年のJリーグの試合(神戸-G大阪)=ノエビアスタジアム神戸(撮影・榎本雅弘)
マスクを着用しての応援だった2022年のJリーグの試合(神戸-G大阪)=ノエビアスタジアム神戸(撮影・榎本雅弘)

Jリーグと日本野球機構(NPB)が合同で開催してきた「新型コロナウイルス対策連絡会議」の定期開催が28日、終了した。コロナの感染拡大を受け、2020年3月3日にスタートした会議は、2週間に1回のペースで開かれ、2年9カ月間で計68回実施。サッカー界とプロ野球界がタッグを組み、専門家チームに意見を聞きながら未曽有の感染症に立ち向かう画期的な取り組みは、コロナ禍に見舞われた日本のスポーツ界をリードしてきたといっても過言ではない。

定期的に選手やスタッフの陽性検査を行いながら、できる限り試合を催行していく手法などは、他の多くの競技でも参考にされた。Jリーグは定期開催の最後となった28日の会議で「Jリーグ新型コロナウイルス対策 3シーズン分の総括(速報版)」を報告。その後に報道資料として展開したサマリーには、「スポーツ文化を守る」ためのJリーグの奮闘ぶりが記されていた(公式ホームページでの一般公開は、実行委員会での報告後を予定している)。

観客クラスターはゼロ

3シーズンでJリーグが催行した公式戦の試合数は計3373試合。うち、無観客試合(リモートマッチ)は86試合あった。コロナ禍が原因で中止となったのは52試合だが、延期などの措置が行われず、未開催となったのは、2020年シーズンの1試合(8月12日に予定されていたYBCルヴァン・カップ1次リーグの広島-鳥栖)しかなかった。

一方、トップチームに登録された選手、監督、スタッフの陽性者数は3シーズンで延べ1736人に上った。しかし、スタジアムで観客のクラスター(集団感染)が発生したとの報告は、1件もなかった。

選手、監督、スタッフの検査は、2020年シーズンは2週間に1度のPCR検査を延べ4万4613回行い、8億5千万円の費用がかかっていた。

しかし、21年シーズンは6万8225回に検査回数が増え、オンサイト検査も行うようになったのにもかかわらず、費用は6億5千万円に減少。

22年シーズンには、新たに試合当日のスクリーニング検査を加え、過去2シーズンよりも格段に多い23万9976回の検査を行ったが、PCR検査から抗原定性検査に手法を変更することで、費用は1億8400万円(見込み)と、さらに少なくなった。

どのように試合を運営していったらいいのかなどを定めた「新型コロナウイルス感染症対応ガイドライン」は感染状況や新型コロナウイルス対策連絡会議での知見をもとに、3シーズンで計71回も改定。22年シーズンの後半からは段階的に声出し応援も再開し、約8割のクラブ(58クラブ中52クラブ)による計246試合で声出し応援エリアが設けられた。

スタジアムの熱量を取り戻す

W杯カタール大会の日本-コスタリカ。スタンドの観客はマスクなしで声援を送る=アハマド・ビン・アリ競技場(撮影・村本聡)
W杯カタール大会の日本-コスタリカ。スタンドの観客はマスクなしで声援を送る=アハマド・ビン・アリ競技場(撮影・村本聡)

こうしたさまざまな努力により、コロナ禍前の「日常」だった活気あるスタジアムの試合風景は、徐々に戻りつつある。

サマリーでは、2023年シーズンに向けた課題として、

①本格的な正常化と流行期における開催リスクを両立させるメリハリのある対策

②検査費用を中心としたさらなる費用対効果を実現するコロナ対策

③スタジアムの熱量を取り戻すための、声出し応援と満員のスタジアムの両立

-などを挙げる。

中でも、③の「満員」を達成できるかは、Jリーグにとどまらず、他競技への波及効果も考えると、かなり重要なポイントとなる。

Jリーグの2020~22年の各シーズンの入場者は、

20年シーズンが361万4044人、

21年シーズンが503万4064人、

22年シーズンが802万5311人

-と徐々に増加。

コロナ禍前の19年シーズン(1104万3003人)との比較では、20年シーズンはわずか33%だったのが、21年シーズンは46%となり、22年シーズンは73%まで戻ってきた。

ただ、J1の1試合平均の入場者数でみると、数字は若干悪く、22年シーズンの1万4328人は19年シーズン(2万751人)の69%にとどまる。

22年シーズン中はまだ、声出し応援エリアの収容人数は上限の50%、その他のエリアは100%-との入場制限があったため、観客席を満たすことができなかった。この制限がなくなったときに、19年の数字にどこまで近づけるかが、問われることになる。

もしかしたら、マスク着用も含めて「制限なし」で開催されているワールドカップ(W杯)カタール大会から得られるヒントもあるかもしれない。

地方でサッカーの関心高める

J1参入プレーオフ決定戦で京都を応援する観客=サンガスタジアム(撮影・榎本雅弘)
J1参入プレーオフ決定戦で京都を応援する観客=サンガスタジアム(撮影・榎本雅弘)

Jリーグは11月15日に「新たな成長戦略とリーグ組織の構造改革」を発表したばかり(構造改革は2023年1月1日付の関連規約などの改定をもって適用開始)。

その中で、

①(J1からJ3までの)58クラブが、それぞれの地域で輝く

②トップ層が、ナショナル(グローバル)コンテンツとして輝く

-との「2つの成長テーマ」を掲げた。

2つとも、Jリーグの価値を向上させるために欠かせないポイントだが、注目したいのは①の方だ。はっきりと示せるデータがあるわけではないが、コロナ禍によりダメージを受けた観客数の回復具合は、都市圏よりも地方の方が遅れていると指摘する声があるからだ。

Jリーグはすでに福島、富山、愛媛、熊本、鹿児島の5地域のテレビ局でサッカー応援番組を放送する取り組みを10月から先行実施しているが、今後、地方でサッカーへの関心をどう高めていくのかに着目したい。


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