議員の「先生」呼称、呼ぶ側、呼ばれる側の本音は…

議員を「先生」と呼ばない。長年の慣例だった先生呼称の見直しに踏み切った大阪府議会の試みは、各地の地方議会や自治体にも一石を投じている。どこまで広がるかは見通せないが、そもそも国会議員を含め議員は先生の名に恥じないような言動が求められるとの指摘もある。呼ぶ側、呼ばれる側の本音に迫った。

「最も無難な呼び方。私自身も議員の集会におじゃますれば『○○先生の集会』という言い方をすることもある」。新潟県の花角英世知事は11月の記者会見で議員の先生呼称について、使い勝手の良い表現との認識を示した。

呼称見直しの発端は大阪府議会。9月末、議員同士が呼び合う際などに用いてきた先生呼称を使用しないことで合意した。「議員は特別」と勘違いし、議員と職員に上下関係が生じないようにする狙いだ。見直しから2カ月。府議会事務局は「意識して議員と呼ぶ職員が増えた」と話す。

「無難」「嫌みではない」…

他の自治体はどうか。まずは議員に接する機会の多い自治体職員の声に耳を傾けてみると、「議員の顔と名前が一致していない場合、先生と呼んでいれば無難に収まり、重宝している」(山梨県議会職員)、「年長の議員には『○○さん』とは呼びづらく、先生と呼んでしまう」(青森県職員)との声が漏れる。

選挙で有権者の負託を受けて当選した議員に「敬意を払って先生と呼んでいる。決して嫌みではない」(別の青森県職員)との声もある一方、長野県松本市の市議会事務局幹部は「対等な関係なので先生とは呼ばない」。平成初期から先生呼称NGの文化が浸透しているという。

小規模自治体では、町内会などの「地区代表」として議員を送り込むケースが多く、普段から付き合いのある身近な存在だ。北海道のある自治体職員は「先生というよりも、まちづくりのパートナーの側面が強い」といい、さん付けが多い。

ふさわしい仕事を

呼ばれる側の意識はどうか。青森県のベテラン県議は「先生と呼ばれると、相手がへりくだる感じで不自然な印象を受ける」と打ち明け、こう続けた。「そもそも県議の中に書生を持つほどの力量のある議員がいるのか。『さん』や『議員』の方がしっくりくる。先生呼称はなくすべきだ」

長野県の若手県議も「過去に先生と職員から呼ばれ、そのたびに『先生はやめてください』と伝えてきた」と明かす。山梨県の若手県議は「ベテラン議員に『○○さん』と呼びづらいが、自分はさん付けで呼ばれるのに抵抗はない」と指摘する。

「さん」や「議員」で呼ばれているという長野市議の箱山正一氏。「地域の代弁者として困りごとなどに応える立場なので、『先生と呼ばれるなんてとんでもない』と支持者に伝えるが、『そのぐらいの気概をもって務めてほしい』と切り返されることもある」

「自問するきっかけに」

地方政治に詳しい法政大大学院の白鳥浩教授は、大阪府議会の先生呼称見直しについて議員自身への問題提起との認識を示し、呼ばれる側の議員に注文する。

「地域の選良として自分が先生の名に値する政治家なのか自らを省み、自問するきっかけにしてほしい。つまり、呼称見直しという小手先の議論ではなく、議員自身が先生と呼ばれるに足るかどうかだ。どう呼ばれるかは別として、先生の重みを考えてほしい」

岸田文雄内閣の相次ぐ閣僚辞任については「ジタバタして最後は逃げ道がなくなって辞表を出す姿は、実に先生らしくない。国会議員も地方議員も当選回数が増えれば、先生呼称にあぐらをかいているのではないか」と指摘する。

先生呼称を巡る受け止めはさまざまだが、肝心なのは議員としてふさわしい仕事をしているかどうか。来春の統一地方選は、有権者がセンセイの仕事ぶりを厳しくチェックし、審判を下す機会となりそうだ。

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