「鬼筆」越後屋のトラ漫遊記

阪神は主張せよ、巨人描く「球界近未来図」は不透明

都内で開催されたプロ野球オーナー会議(ⓒNPB/BBM2022)
都内で開催されたプロ野球オーナー会議(ⓒNPB/BBM2022)

阪神は巨人主導の〝球界近未来図〟に違和感も不安感も感じないのですか―。プロ野球12球団と日本野球機構(NPB)はオーナー会議(24日開催)で2024年シーズンからイースタンとウエスタンで計2球団を増やす構想を発表。ハヤテインベストメント社(本社・東京都中央区)が静岡市の清水庵原球場を本拠地に24年からイースタン加盟を申し出たことで、さらにもう一球団の加盟を公募(来春開始)するプランです。従来の新規加盟とは異なる「参加」という考えに基づき、預かり保証金など野球協約が定める計30億円よりも安価な費用で新規参入を公募するわけですが、2軍しか持たない球団経営の先行きは…。「球界の裾野を広げる」というならば選択肢は他にもあるでしょう。阪神は真っ向から声を上げるべきです。

2軍限定の2球団新規参入

球界は新たな曲がり角に来ていると思います。日本球界を引っ張ってきた巨人が目指す「球界近未来図」がその輪郭をあらわにしてきました。24日に行われた12球団オーナー会議で発表されたのは「野球の裾野を広げるために~ファーム・リーグの拡大を図るNPBビジョン~」でした。

内容は2年後の24年シーズンからイースタン、ウエスタン・リーグで計2球団を増やす構想です。新球団は既存の12球団のフランチャイズ以外の府県を本拠地とし、来春にも公募するといいます。議長の巨人・山口寿一オーナー(65)は「手の挙がったところを審査させていただき、再来年の2軍リーグ開催までに実現を図っていきたい」と話しました。

私のコラム(9月16日付の産経新聞・鬼筆のスポ魂「2軍参入 巨人推進も複数は反対」)で真っ先に書いたのですが、ベンチャー企業のハヤテインベストメント社が静岡市の清水庵原球場(収容人員1万人)を本拠地として、24年からのイースタン加盟を申し出ました。その後、ファーム検討委員会による議論が進められた結果、新たに2軍だけの球団をもう一球団、公募で募り、計2球団を「参加」させるという構想がいよいよオーナー会議という球界最高峰の会議で明るみに出たのです。

新球団は2軍のみのためドラフト会議には参加しません。既存12球団への選手の移籍は検討課題。従来の新規加盟とは異なる「参加」のため、預かり保証金など野球協約が定める計30億円よりは安価な費用で新規参加ができる―という方針も明らかになりました。

ハヤテインベストメント社は現在、野球チームを保有してません。仮に参入が決まっても、他球団の戦力外選手や外国人選手を中心とするチーム構成となりそうです。なので既存の他球団2軍と試合を行っても、レベルに相当の開きが出るのではないか?と懸念の声が球界内で流れていました。しかし、なぜか参加プランは消えることなく〝生き残り〟ました。

ではもう一球団はどこなのか? 公募を想定しているのはBCリーグ(ベースボール・チャレンジ・リーグ=甲信越地方2県と関東地方5県、東北1県を活動地域とするプロ野球の独立リーグ)か、四国アイランドリーグ(四国4県を活動地域とするプロ野球独立リーグ)の所属チームのひとつ…と見られていますが、オーナー会議が終了した時点では参加希望を明確に示す球団(企業)は存在しません。

課題残る経営面、早期撤退の可能性も

ハヤテインベストメント社の2軍参入案を書いた時にも指摘したのですが、今回の2軍2球団参入プランを推進しているのは紛れもなく巨人です。球界内には「球界の裾野を広げる」という意気込みには賛同するものの、「2軍だけの新規参加」という流れには異論を唱える球団が多くあります。

2軍だけの新球団が参考にするのは独立リーグのビジネスモデルでしょう。2軍だけとはいえ、プロ野球の球団経営には春季キャンプの費用や専用球場、室内練習場の確保、監督やコーチ、スタッフや選手の採用資金など開始時に数十億円の投資が必要です。シーズン中の遠征費や宿泊費にも約4億~5億円がかかりますね。こうした多額の出資に対して、収入源をどうするのか。チケット収入やテレビの放映権料は期待できません。現在の独立リーグのように地元の企業や商店街などからのスポンサー収入がメインになるでしょう。

ユニホームにベタベタと広告を張り付け、球場に所狭しと広告を張る…。例えば静岡ならば地場産業のスポンサーが付くのかもしれませんが、果たしてこれが何年持つのか? 場合によっては2~3年で企業は撤退→大幅な収入減→球団経営は行き詰まり…となりませんか。こうした指摘はすでにプロ野球界から出ています。その急先鋒(せんぽう)は日本ハムですね。

日本ハムといえば、つい最近、来春に開業する新球場「エスコンフィールド北海道」のファウルゾーンのサイズが実行委員会(11月7日)で「規定を満たしていない」と指摘されましたね。公認野球規則では本塁からバックネット側のフェンスまで60フィート(約18メートル)以上が必要とされていますが、15メートルほどしかなかったのです。日本ハムは指摘を受け、今後2年間で球場を改修する考えを示しましたが、突然のように降って湧いた新球場の規則違反の指摘の裏には何があったのでしょうか…。

2軍だけの2球団参加プランに対して、当然ながら球界内には「本当に野球界の裾野を広げ、レベルアップを目指し、新たなフランチャイズのファンの支援を受けるためには1軍を持つ球団を参入させるべきではないか」という意見がくすぶっています。1軍が参入すれば必然的に新たな2軍も生まれます。預かり保証金の計30億円を支払ってまで、球界に参入したい企業などない? いやいや全然、球界の裏事情は違います。ここでは書きませんが、つい最近まである球団の買収案が進行していました。プロ野球の球団を持ちたい企業は驚くほど多いのです。

参入問題に〝虎の主張〟を

こうした球界の流れの中で阪神の考えはどうなのでしょう。12月9日に初めて行われる現役ドラフトは、阪神の谷本修オーナー代行(当時は球団副社長兼本部長)が主導してきました。巨人が「戦力外通告者の交換にしかならない」と反対する中で、実現に向け球界をリードし、新たな時代を切り開いたと思っています。さらに「セ・リーグのDH制導入」を主張する巨人にはなびかずに封じ込めたのも阪神でしたね。

こうしたルール変更や球界の新制度で〝虎の主張〟を押し通したわけですが、今回の2軍2球団参入プランに対する立場は???です。実はファーム・リーグの拡大を…発表したオーナー会議はその前段として、こんな取り決めもしています。「1軍については球団経営の基盤が見通せないため、12球団制を維持する」です。あらかじめ1軍は12球団制存続を決めてしまっていたのですが、その時、阪神は巨人と同一歩調をとったわけですね。阪神は本当に2軍だけの2球団が永く存続すると考えているのでしょうか。理解できません。

パ・リーグ各球団はそろそろ巨人主導の球界に嫌悪感さえ見せ始めたといいます。経営存続の見通しが立たない2軍だけの2球団参加プランはこの先、どうなりますかね。その時、阪神はどんなスタンスで臨むのでしょうか。球界は舞台裏でギシギシと音を立て始めています。

【プロフィル】植村徹也(うえむら・てつや) 1990(平成2)年入社。サンケイスポーツ記者として阪神担当一筋。運動部長、局次長、編集局長、サンスポ特別記者、サンスポ代表補佐を経て産経新聞特別記者。阪神・野村克也監督招聘(しょうへい)、星野仙一監督招聘を連続スクープ。

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