令和7年春に県立美術館をオープンさせる鳥取県が、コレクションの目玉として約3億円で購入した米国の現代美術作家アンディ・ウォーホル(1928~87)の作品「ブリロの箱」をめぐり、「作品の意味が分からない。税金の無駄遣い」「有名な作品で本物と出合うのが楽しみ」と、県民の意見が二分する大論争となっている。購入の是非をめぐる議論は県外へも広がり、その過熱を受けて平井伸治知事は「開館後、3年ほどかけて入館者に保有・展示の是非について投票してもらったらどうか」と提案。小さな県の大きな買い物の判断は入館者に委ねられる見通しとなった。
「芸術とは何か」
「起こるべくして起こった議論。ポップアート、現代美術に対する理解の問題で、まさに現代美術史がたどってきた道筋を私たちがいま歩いているということなのかもしれない」
平井知事は11月中旬の定例記者会見で自らこの問題を切り出し、沸騰する議論に対するトップとしての認識を示した。そのうえで、「現代美術の承認の歴史を踏まえると、(保有の是非を)短兵急に決めてしまうのはいかがか」として、入館者投票の考えを示した。
ブリロの箱は、マリリン・モンローやエルビス・プレスリーを描いた作品で知られ、「ポップアートの旗手」と評されるウォーホルが1964(昭和39)年に制作した。その後も関係者が追加で作品を作っている。幅、奥行き、高さとも40センチ程度の板製の箱で、米国製の食器洗いパッド「ブリロ」の外箱を精密に模したデザイン。大量消費の象徴で「芸術とは何か」を問うているとされる。