五輪談合 業界ぐるみ、赤字リスクの分散狙いか

東京五輪・パラリンピックのテスト大会を巡る入札談合事件で、家宅捜索のため博報堂に向かう捜査関係者=28日午前10時、東京都港区
東京五輪・パラリンピックのテスト大会を巡る入札談合事件で、家宅捜索のため博報堂に向かう捜査関係者=28日午前10時、東京都港区

東京五輪・パラリンピックを巡る談合事件で、東京地検特捜部と公正取引委員会が28日、独占禁止法違反(不当な取引制限)容疑で新たに広告業界2位の「博報堂」などの家宅捜索に踏み切った。すでに捜索を受けた電通、違反を自主申告した旧アサツーディ・ケイ(ADK)と「広告トップ3」がそろい踏みし、業界を挙げ運営や収益上の「リスク分散」のため談合を行っていたとの見方も出ている。(吉原実、桑波田仰太、石原颯)

「(業界トップ2の)電通と博報堂が仕事を分け合うのは普通、あり得ない」。捜索を受けた博報堂の関係者は、驚きを隠せない様子で語った。

談合疑惑のあるテスト大会の計画立案支援業務の競争入札を落札した9社のうち、特捜部と公取委は25日、電通とイベント制作会社「セレスポ」を家宅捜索。28日は博報堂に加えて広告会社「東急エージェンシー」、番組制作会社「フジクリエイティブコーポレーション」、イベント制作会社「セイムトゥー」をそれぞれ捜索した。

広告会社の大広と電通グループの電通ライブ、独禁法の課徴金減免制度(リーニエンシー)に基づき公取委に自主申告したADKを含め、いずれもスポーツイベントなどの運営で実績のある企業。業界関係者は「日本のスポーツ関連で枢要な会社がそろっている印象だ」と話した。

個別にノウハウ

「できる会社は限られるから、発注先は自ずと決まってくる」。テスト大会関連事業を発注した大会組織委員会の元職員は、本大会が始まる前、周囲にこう漏らしていたという。

日本オリンピック委員会(JOC)の元幹部によると、スポーツイベント業界では、競技によって運営のノウハウを持つ会社が異なる。例えば武道関係であれば、畳の発注から輸送など、孫請けレベルまで特定の会社に決まっているといい「競技団体が大会運営を業務委託する場合、従来は随意契約で発注してきた」とする。

広告業界関係者は、広告事業と比べてイベント事業は人員も時間もかかり、収益面で赤字となるリスクが小さくないとした上で「あえて他社の仕事を取りに行くメリットがない」と解説。イベント事業で談合をする慣習はないとの認識を示した。

業界ぐるみ

そんな中で浮上した談合疑惑。「業界ぐるみ」の様相を呈した背景には、多種多様な競技が同時に開催される五輪・パラという特殊性がありそうだ。

電通の現役社員は「人手もかかるから、全てを電通でやるわけにはいかない。独占すれば批判されるし、全リスクを引き受けることになる。仕事を分けたとすれば、リスク分散のためではないか」と話す。

談合の疑いが持たれている広告会社の幹部は「五輪関連で収益が上がっていたのは、大会スポンサー企業関連の広告業務。イベント事業は重要視されておらず、うまみはなかったと思う」。捜索を受けたある会社の幹部は「談合のことは承知していないし、事実ではないと考えている」と打ち明けた。

公取委OBは「仮に各社が得意分野で『阿吽(あうん)の呼吸』で受注していたとしたら、罪に問うのは難しくなる」と指摘する。

一方、検察幹部は「動機が利益でもリスク分散であっても、受注を割り振っていれば違法であることに変わりはない」としている。

会員限定記事会員サービス詳細