春高バレー強豪ひしめく大阪に新風 城南学園快進撃の舞台裏

春高バレーに向けて練習する城南学園高の選手たち=大阪市東住吉区の城南学園高校(鳥越瑞絵撮影)
春高バレーに向けて練習する城南学園高の選手たち=大阪市東住吉区の城南学園高校(鳥越瑞絵撮影)

高校女子バレーで全国レベルの強豪がひしめく激戦区の大阪で、私立の城南学園高(大阪市東住吉区)が初の全国切符を手にした。「春高バレー」として来年1月に行われる「第75回全日本バレーボール高校選手権大会」に出場する。近年、大阪府の代表校は金蘭会、大阪国際滝井、四天王寺と全国優勝経験のあるチームが独占してきた。勢力図に変化をもたらし、新風を吹き込んだ城南学園。躍進の秘密を探った。

チームは和気あいあい

練習場の体育館。選手たちの明るい掛け声が響く。2019年からチームを率いる廣島慎太郎監督(33)は「いい意味で和気あいあい。重圧は当然あるが、それをはねのけるぐらい、のびのびしている」と評する。部員は3年生7人、2年生12人、1年生4人の計23人。城南学園中から上がってきた選手のほか、外部からのスポーツ推薦の選手らが中心だ。

主将の高橋鈴音(りん)(3年)やエースの土屋美咲(3年)、鮫嶋(さめしま)優香(3年)らは特進系コースに在籍。平日は7時限授業のため、練習は午後4時半頃から7時半頃まで。寮もなく、通学時間の関係から朝練は実施しない。限られた時間の中で、腕を磨いてきた。

城南学園高バレー部の3年生の選手たち=大阪市東住吉区(鳥越瑞絵撮影)
城南学園高バレー部の3年生の選手たち=大阪市東住吉区(鳥越瑞絵撮影)

小柄な選手が多いのも特徴だ。春高バレー府予選のベンチ入りメンバーの平均身長は163センチ。150センチ台前半も4人いる。このため、普段は個々の守備範囲の拡大を重点的に鍛錬を重ねる。廣島監督は「諦めたらボールは必ず落ちる。妥協は許さない」とコートに鋭く視線を向けた。

指揮官が成長の兆しを感じたのは昨年の近畿大会だったという。8強入りをかけた奈良文化との3回戦で、フルセット(20-25、30-28、15-13)の末に勝利。「これだけの意地を見せた子供たちを見て、底力があると感じた」

今年のインターハイ府予選は四天王寺に敗れて3位となり、本戦出場はならなかったが、近畿大会の準決勝で四天王寺を撃破。春高バレー府予選は4強入りを懸けた大阪国際滝井・大阪国際(前大阪国際滝井)との試合でストレート勝ちし、廣島監督も「パーフェクトゲーム」とうなった。代表決定戦でも四天王寺をフルセットの末に破り、全国切符を手にした。

中高一貫で強化

かつては危機的状況に陥っていた。11年、バレー部の部員はゼロで休部状態だった。そこで一念発起したのがバレー部顧問の谷口仁(ひとし)教諭(51)。「強化したら面白いやろな」と考えついたのがきっかけだった。全国の強豪には中高一貫教育の高校が多い。城南学園にも中学がある。高校バレー部を復活させるためにも、中学に強化クラブとしてバレー部を創部し、中高の6年間で選手育成を手掛けようと動き始めた。

業務を終えた後、毎晩のように学校パンフレットを手に大阪の小学生チームを回り、スカウトを始めた。城南学園に知名度はなかったが「中高一貫は有利」とアピールし続けたという。地道な活動だったが、5人の選手が中学入部を決めてくれた。学校側も快くバックアップ。12年に中学にバレー部が立ち上がった。

大会で上位になかなか食い込めず、苦しんだ時期もある。学校側は16年にスタッフを増やし、大阪から関西へとスカウトの場を広げ、優秀な人材確保に奮闘した。高校でバレー部が復活したのは17年。外部からの入部を加えた部員は10人以上となり、紅白戦もできる人数が集まった。高校バレー部は18年に初めて近畿大会出場を果たし、昨年は8強入り。着実に力をつけていった。

自立を求める指導

城南学園高を率いる廣島慎太郎監督=大阪市東住吉区(鳥越瑞絵撮影)
城南学園高を率いる廣島慎太郎監督=大阪市東住吉区(鳥越瑞絵撮影)

チームの躍進に廣島監督の存在も欠かせない。中学でバレーを始め、大阪学院高から大産大へ。大学4年時はリベロとしてプレーした。卒業後、営業職の会社員として約2年間勤務。そのときに「自分で困難を乗り越える力が必要」と感じ、「社会で通用する人材を育てたい」との思いに至った。教員免許を取得し、同校に採用された19年にバレー部監督も任された。

指導する上で大切にしているのが「自立」。あらゆることを選手自身に考えさせる。エースの土屋は「何がいけなかったのか、過程を自分たちで考えなさいというスタイル」と話す。選手のプレーが手を抜いたように見えると、練習参加を許さないこともある。指揮官は「10年後、ミスしてもどうっていうことはないだろうという甘い人間になってほしくない。まだまだ伸びる子たちだから」と口にした。

指導は厳しくても、選手からの信頼は厚い。普段は笑顔をあまり見せないが、試合では一変する。鮫嶋は「試合では大きなガッツポーズで喜んでくれる。それでチームも盛り上がる」と話す。インターハイ府予選で四天王寺に敗れたときは、選手と一緒に悔し涙を流した。「自分のことのように悔しがってくれた。先生のためにももっと頑張らないといけないと思った」と振り返る。

昨年、チームは目標に「大阪の歴史を変える」「打倒金蘭会」を掲げた。春高バレーまであと約1カ月。大阪女子の歴史を塗り替えた今、目の前にあるのは大阪代表として春高に一緒に出場する金蘭会を倒すことだ。全国大会では高さのあるチームが多いだけに、残りの期間で速さに磨きをかけていく。そして最後に選手たちは口をそろえた。「目標は日本一」。発展途上のチームに迷いはない。(嶋田知加子)

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