【台北=矢板明夫】26日に投開票された台湾の統一地方選挙で与党、民主進歩党が大敗し、最大野党、中国国民党が勝利したことで、2024年の次期総統選挙での各政党の候補者選びに影響をもたらすことは必至だ。水面下ではすでに、駆け引きが始まっている。
今回の統一地方選で、民進党は21県・市長ポストのうち5つしか確保できず、主要都市の台北、桃園などで軒並み国民党に敗北した。台湾の中央選挙委員会の統計によると、県・市長選挙で、民進党の得票率は約41・62%で計474万余り。地方選と総統選における有権者の投票行動は単純比較できないものの、今回の得票は、20年1月の総統選で蔡英文氏が獲得した史上最高の817万票余りと比べ、半減に近い。
一方、国民党は今回、約570万票を獲得し、得票率は50・03%と過半数に達した。今回の選挙は、民進党が自陣営の票を十分に積み上げられなかったことが敗北の主因となった。
蔡英文総統は敗北の責任をとって、兼務していた民進党主席を辞任。党主席は次期総統や立法委員(国会議員に相当)の公認候補を決める党内予備選を主導するが、蔡氏の辞任により、蔡氏率いるグループに不利になったとの見方がある。
蔡グループはこれまで、次期総統候補に陳建仁前副総統を擁立しようとしていたとされる。今回の敗北で陳氏が次期総統に立候補する可能性が低くなり、蔡氏と距離を置く頼清徳副総統が民進党の次期総統候補として最有力視されるようになった。
頼氏は約4年前、前回の総統選への出馬を表明したが、予備選で蔡氏に敗れた経緯がある。最近は蔡氏の周辺と関係修復を図っているとされる。地方選後、頼氏はフェイスブックで、敗戦について支持者に謝罪したが、将来について言及していない。
一方、国民党では、今回の地方選の候補者選びを主導した主席の朱立倫氏が有力視される。朱氏は16年総統選で蔡氏に大敗している。今回の選挙で台北市長に当選した蔣介石元総統のひ孫、蔣万安氏は党内で将来の総統候補とみられているが、市長に当選したばかりであり、次期総統選に出馬せず、28年か32年の総統選を目指すとされる。
また、12月に台北市長を退任する第二野党、台湾民衆党主席の柯文哲氏も総統選に強い意欲を示している。台湾民衆党の候補は今回の地方選で、激戦地・新竹市の市長に当選するなど、存在感を示した。民衆党の関係者は「若者や無党派層の中に民衆党の支持者が多い。『反中の民進党』や『親中の国民党』と異なり、『中間路線の民衆党』をアピールすれば、チャンスはある」と指摘する。