【ソウル=時吉達也】158人が死亡したソウルの繁華街、梨泰院(イテウォン)の雑踏事故で、被害者名簿の公開を巡り韓国与野党が対立している。遺族と連携して尹錫悦(ユン・ソンニョル)政権の責任追及につなげたい野党陣営は「社会全体で悲しみを共有すべきだ」として速やかな公開を主張。与党側は「被害者遺族を政局の道具として利用している」と反発している。
雑踏事故の発生から、29日で1カ月。事故現場となった繁華街と地下鉄駅入り口を結ぶ路地には犠牲者を悼む多数のメッセージが貼られ、追悼に訪れる人々が現在も途切れない。営業を停止したままの飲食店も多く、「1日の売り上げが10万ウォン(約1万円)にも満たず、営業をやめた」(飲食店店主)。目抜き通りが〝ゴーストタウン〟の様相を呈するなど、惨事の傷痕が生々しく残る。
この間、警察当局は500人規模の特別捜査本部を設置し、業務上過失致死傷容疑などで広範囲に捜査を実施。捜査関係者は28日、「今日で必要な調査はある程度終えられる」と述べ、週内にも警察や自治体幹部らの身柄拘束に踏み切る方針を示している。