浪速風

女神と仙女の覇権争い

米国が主導し日本も参加する国際月探査「アルテミス計画」の一環で、打ち上げられた米航空宇宙局(NASA)が開発した新型宇宙船「オリオン」=16日、米フロリダ州のケネディ宇宙センター(NASA TVより)
米国が主導し日本も参加する国際月探査「アルテミス計画」の一環で、打ち上げられた米航空宇宙局(NASA)が開発した新型宇宙船「オリオン」=16日、米フロリダ州のケネディ宇宙センター(NASA TVより)

名月の晩には他人の畑のものをとっていいという風習が、地方によってあった。供え物を子供たちがとって歩くことが許される「月見泥棒」も有名だ。名月をめでる中国の「中秋節」は家族だんらんを重視する。月には、自我を超えて他者との一体感を希求させる何かがあるようだ

▶その月が、大国による覇権争いの舞台となりつつある。米国のアルテミス計画は2025年に53年ぶりとなる有人月面着陸を目指しており、初めて女性飛行士が月面に立ちそうだ。一方、追う立場の中国も嫦娥(じょうが)プロジェクトで月面の土壌サンプル回収や世界初となる月面裏側への軟着陸に成功しており、有人着陸と月面基地の建設を虎視眈々(たんたん)と狙う

▶アルテミスはギリシャ神話の月の女神で弓による狩猟を好む。一方、嫦娥は伝説上の月に住む仙女で、夫は弓矢の名手である。月面開発の主導権争いは米中新冷戦の結末を占うものになるかもしれないが、両国が大団円を迎えるのは難しそうだ。

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