台湾の与党大敗、党内混乱も 蔡英文氏が党主席辞任

民進党の大敗と蔡英文総統の党主席辞任を1面トップで報じる27日付の台湾各紙(共同)
民進党の大敗と蔡英文総統の党主席辞任を1面トップで報じる27日付の台湾各紙(共同)

【台北=矢板明夫】台湾で26日に行われた統一地方選挙で、与党の民主進歩党は歴史的大敗を喫し、蔡英文総統が責任を取り、党主席を辞任すると発表した。民進党内では蘇貞昌・行政院長(首相に相当)の責任を問う意見も浮上しており、党内の混乱はしばらく続きそうだ。

統一地方選の結果、民進党籍の首長が7人から5人に減っただけでなく、6つの直轄市のうち、民進党籍の市長が台南市と高雄市だけとなった。台北市、新北市、桃園市、台中市の主要4都市の市長はいずれも野党籍となり、今後、中央と地方が政策などをめぐり対立する場面が増えそうだ。

台湾では、2024年1月に次期総統選挙が行われる。来春から各政党内で候補者選びが本格化する。

本来ならば、24年に任期満了で総統を退任する予定の蔡氏が、党主席として党内の予備選挙を主導するはずだった。しかし、このような形で党主席を辞任したことで、党内に大きな影響力をもつ調整役がいなくなり、予備選は混乱することも考えられる。

台湾メディアによれば、蔡氏の党主席辞任を受けて、今回の統一地方選で高雄市長に再選された陳其邁氏が代理主席としてしばらく党務を担当することで調整が進められている。

今回の選挙では、民進党の大きな敗因として「物価高騰と景気低迷」が指摘されている。経済政策を担当する蘇・行政院長の責任を問う声も党内で浮上している。

26日夜、蘇氏は蔡氏に辞表を提出したが、慰留されたという。民進党幹部は「慰留は一時的なもので、蘇氏は来春までに退任する可能性が高い。有権者の信頼を取り戻すために、思い切った人事をしないと次期総統選は戦えない」と話している。

一方、最大野党の中国国民党の次期総統候補は、今回の統一地方選挙で党を勝利に導いた朱立倫氏が最有力視されるようになった。国民党は中国との関係改善を主張しており、今後、国民党が首長を務める都市と中国側との「都市間交流」が増えそうだ。

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