防衛力強化に関する政府の有識者会議は22日、防衛費増額の財源について「幅広い税目」での国民負担を求める提言案を岸田文雄首相に提出した。四半世紀もの間、消費税増税など財政緊縮路線によって国内総生産(GDP)と防衛費に代表される国力が停滞してきたというのに、まず増税せよとは、不見識ではないか。
有識者会議の正式名称は「国力としての防衛力を総合的に考える有識者会議」であり、「国力」を意識する。しかし、提言は国力について「わが国が持てる力、すなわち経済力を含めた国力」と冒頭で記述したのみだ。
国際的によく引用される国力の定義は、米中央情報局(CIA)の元分析官、レイ・クライン氏の国力方程式である。人口・領土、経済力および軍事力の合計に戦略目的と国家意思を掛け合わす。「平和憲法」のもと、日米安全保障条約に依存する日本の場合、戦略目的と意思は米国次第だが、経済力と軍事力は日本みずからの政策に基づく。そこで、経済力を代表するGDPと軍事力(国防費)の対GDP比率を米欧主要国と比較しながら、1996年から2021年まで5年ごとの推移をグラフにしてみた。いわば簡略版の国力比較である。