傲慢エースを変えた16歳の涙、鎌田大地

コスタリカ戦の前半、ドリブルする鎌田大地=アハマド・ビン・アリ競技場(蔵賢斗撮影)
コスタリカ戦の前半、ドリブルする鎌田大地=アハマド・ビン・アリ競技場(蔵賢斗撮影)

【アルラヤン=小松大騎】サッカー・ワールドカップ(W杯)カタール大会1次リーグ第2戦で27日、コスタリカに惜敗した日本代表。攻撃陣を牽引(けんいん)した鎌田大地(26)は好機をものにできず、悔しい表情でピッチを去った。そんなサムライブルーの司令塔は高校時代、歯に衣(きぬ)着せぬ物言いや「傲慢」な振る舞いが目立ったという。エースを変えたのは、16歳で流した涙と恩師の熱意だった。

忘れられない一本のシュートがある。平成24年11月の全国高校選手権京都府予選決勝。1点を追う後半アディショナルタイム、パスを受けた1年生の鎌田が至近距離からのシュートを外した直後、試合終了のホイッスルが鳴り響いた。

ロッカールームで号泣した鎌田に駆け寄った3年生たちは「お前がチームを引っ張っていけ」と声をかけ、誰も失敗を責めなかった。翌日、鎌田は丸刈りで練習場に現れた。「自分のミスで負けたのに、決して責めなかった上級生の思いを力に変えたかったのでしょう」。京都・東山高サッカー部で指導した福重良一監督(51)はこう推察する。これを機に、鎌田は大きく変わっていく。

愛媛県伊予市出身。目標としていたガンバ大阪のユース昇格を逃し、東山高へ進学した。鎌田の父親の幹雄さん(53)と福重監督が、大学時代の先輩後輩の関係だったことも背中を押した。

入学当初から技術は高かったが、欠点も目立った。チームが劣勢になるとボールを追わなくなることもあり、福重監督は姿勢そのものに課題を感じることも多かった。思ったことをハッキリ言葉で伝え、誰にも媚(こ)びない。気を使ってくれる周囲の人にも、「10代で海外移籍しないと意味がない」と傲然と言い放った。

「技術だけでは、プロにはなれない」と、福重監督はさまざまな指導法でアプローチした。叱りつけ、試合にも出さず突き放したこともあった。わかりやすくふてくされると、待っていたかのようにこう諭した。「プロになりたいと言ったのは自分だろ?」。他の選手以上にハードワークを求めた。

時間はかかったが、鎌田は変わった。先輩の温かな言葉に落涙した1年時のミス。そして、鎌田の心身両面を知り尽くした福重監督の熱心な指導。守備への意識が高まると、味方のミスを全力でカバーする姿勢も見せ始めた。3年時には自ら主将に立候補。福重監督は「チームを背負う責任感や自己犠牲が成長につながると考えたのかもしれない」と話す。

東山高の卒業式で記念撮影する鎌田大地(左)と福重良一監督(福重監督提供)
東山高の卒業式で記念撮影する鎌田大地(左)と福重良一監督(福重監督提供)

Jリーグのサガン鳥栖に入団し、2年後には海を渡った。現在所属するドイツ1部のアイントラハト・フランクフルトではエースとして大活躍。英BBC放送(電子版)はカタール大会でブレークが期待される有望株の10選手に選出した。

サムライブルーの「顔」として臨む今大会。この日は不発に終わったが、次のスペイン戦でこそ、その真価が問われる。

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