27日、73歳で死去した映画監督の崔洋一さんは、在日コリアンが主役の作品を多く手がけた。日韓・日朝関係の負の歴史や弱者としての立場を強調するのではなく、今を生きる在日のたくましさをユーモアも交えて生き生きと描いた。
作家、梁石日さん原作の「月はどっちに出ている」では、在日コリアンのタクシー運転手の目を通して、外国人やヤクザら多様な人々の人生を見つめた。同じく梁さんの小説を映画化した「血と骨」では、粗暴な在日コリアンの男性が主人公だ。
崔さんと若い頃から親交があった脚本家の荒井晴彦さんは「月は―」について「在日コリアンの被害者的な側面ではなく、したたかさがポジティブに描かれていた」と評価。「同胞からは『恥をさらすな』と批判もされたようだが、(崔さんは)当事者として自らの出自をきちんと作品にした。それまでの在日像を変えた」と話している。