社風の崩壊に危機感
それでも残されたツイッターの社員たちは、必死に粘ろうとしている。解雇された社員と同じ轍を踏みたくないという危機感からか、多くのツイッター社員は新CEOとその取り巻き連中の下での日常がどのようなものかについて沈黙を守っている。
「イーロン・マスクが買収してからわずか1週間しか経っていませんが、このような無秩序ぶりは嘆かわしく、憂慮される事態です」と、元社員のエディ・ペレスは語る。彼はツイッターでプロダクトマネジメント担当のディレクターを務めていた人物で、現在は選挙の安全性と健全性を推進する超党派団体「OSET Institute」の理事をしている。
ペレスは取材に対し、マスクによる解雇騒動によって米中間選挙の健全性が危機に瀕していると警告した。「雇用の安定や家族の扶養といった生活に直結する問題が危ぶまれるなか、現社員や元社員は不安で臆病になり、恐れをなして自分たちの体験を語りたがらないのです」
5人チームで技術的なプロジェクトに取り組んでいたというデミシエルは、次のように語る。「わたしは5人のうちのひとりでしたが、取り組んでいた残りの4人はいなくなってしまいました。このプロジェクトを実現するために4人がやっていたことを、どうやってひとりで進めていけばいいのかまったく読めません。すべての業務をこなすことを考えるだけで、ゾッとした気分になります」
だがデミシエルは、膨大な業務量よりも社風の崩壊を危惧している。「共に働き、友になった人々が会社を去り、社風が少しずつ崩れていく様子を目の当たりにすることは、20時間超の時間外労働が必要になる可能性を考えるよりもはるかに辛いことです」
それでもツイッターの社員たちは、毎日オフィスに通い続けている。自分たちの仕事には価値があり、自分たちが支えるプラットフォームが大切なものだと考えているからだ。また、テック部門全体が一時解雇の対象になっても、職を失いたくないからこその行動でもある。
そしていま、ほんの数日前に解雇された社員のなかには復職を打診されている者もいる。プロジェクト遂行の期限を守るために、解雇された社員たちのスキルが必要であると経営陣が認識したからだ。
あるエンジニアは、復職のチャンスを拒むよう進言している。「相手が本当の姿を見せたときは、その姿を信じることです」として、解雇された社員は復帰すべきではないと言う。「もし会社が自分を解雇した後に唐突に呼び戻そうと躍起になっていたとすると、それはその職場が技術的な厳格さを重んじるところでない証になるでしょうね。わたしならお金だけもらって逃げますよ」
(WIRED US/Edit by Daisuke Takimoto)