解雇騒動に直面したツイッターの従業員たちは、こうして大混乱の渦中に放り込まれた

「この1週間を言い表すとしたら、まさに“ラジオサイレンス(電波停止の状態)”という言葉がぴったりでしょうね」と、匿名のエンジニアは語る。「イーロンや彼に近いアドバイザーたちから、何ひとつ情報がありませんでしたから」

それには、一時解雇の余波も影響していた。ツイッターの上席リサーチアナリストであるマット・デミシエルは、次のように語る。「おそらくご存知だとは思いますが、誰も何ひとつとして耳にしていないのです。今回の決断によって余波を受ける人間がいることを上層部の人間が少しでも理解することが、正しい道筋への小さな一歩になるのではないでしょうか」

胸をえぐるような作業

11月4日の朝にはほとんどのツイッター社員が、自分たちの仕事がまだ求められているかどうか知らされていた。残された者にとっては、誰と組んで業務に当たればいいのか途方に暮れる状況になった。「残された人々がどこにいるのかを把握してオンコールのローテーションを組む人員を確保するために、バラバラになった情報を誰もがかき集めようとしていました」と、ツイッターのあるエンジニアは語る。

具体的には、Slackなどで社員に連絡をとり、解雇されたかどうか聞き出そうとしていた。Slackで返信があれば、ツイッターのIT設備を利用できている、つまり、“断頭台”を免れたことを意味するわけだ。なかには人員不足で作業が中断してしまったチームもあったと、このエンジニアは語る。

「土曜は大掃除で終わりました」と、彼は言う。その日の大半は去っていった同僚のアクセス権を削除する作業と、Twitterに問題が発生した場合に備えて可能な限り安定した状態にする作業に費やされた。

「ときには目の前の作業に集中することも必要です」と、エンジニアは語る。「わたしたちはこうして何とかやり遂げましたが、それは胸をえぐるような作業でした。でも、状況は依然として進み続けています……。少なくともいまのところはね」

「誰もが燃え尽きてしまう」

だが、状況はかろうじて進んでいるにすぎない。マスクはTwitterのアップデートを次々と推し進め、目標に到達しないスタッフは解雇すると脅しをかけている。

ここ数週間の混沌を最も象徴するような画像のひとつは、エスター・クロフォードがツイッターのオフィスの床に寝ているところを写したものだろう。彼女は有料サービス「Twitter Blue」のアップデートというマスクの計画の実行チームを率いていた人物で、11月7日の締切前までにアップデートを実施しようと泊まり込みで作業を進めていたのだ。

伝え聞くところによると、間に合わなければ自身やチームメンバーが解雇されることになる恐れもあったという。このアップデートは、期限前の11月5日にアップルの「App Store」に配信されたが、クロフォードは「新しいBlueはまだ稼働していない」ことを明言せざるを得なかった。

今回取材した現社員や元社員によると、マスクはツイッターの広報担当者を2人を除いて全員解雇している。このため個々のスタッフによる公開ツイートが事実上の会社側の声明と化している状態だ。

このような部分的な成功には、それなりのリスクが伴う。「ものごとがきちんと配備され、準備されているか確認するためには、かなりの突貫工事が必要になります」と、あるエンジニアは明かす。「わたしたちは急ぎ足でさまざまな検証を進めているところなのです」

しかし、性急な変更を新しく実施するたびに、パフォーマンスやプラットフォームの異なる要素間の相互作用に影響を及ぼすことになる。「1週間以上も放置された後に一気に大量のコードを入力し始めると、何もかもがとても煩雑になります」と、エンジニアは安定性の問題を認めながらも語る。

この問題は、それを開発する担当者が過労やストレス、極度の疲労に晒されている事実によって、さらに深刻化している。「持続可能な状態ではありません」と、エンジニアは指摘する。「誰もが燃え尽きてしまうでしょう。人間は十分な睡眠をとれていないと、普段は犯さないような失敗をするものです」

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