導入断念相次いだ英語スピーキングテスト 全国波及は不透明

中学校英語スピーキングテストの会場である、都立日比谷高校に入る学生=27日午後、東京都千代田区(鴨志田拓海撮影)
中学校英語スピーキングテストの会場である、都立日比谷高校に入る学生=27日午後、東京都千代田区(鴨志田拓海撮影)

来年春入学の東京都立高校入試の合否判定に活用するため、都内の公立中3年を主な対象として27日に行われた都の英語スピーキングテスト。真剣勝負の受験の場で「話す力」を客観的に評価し、授業改善などにつなげる狙いだが、公平な採点の難しさなどを理由に反対論は根強い。これまでにも、各地の自治体が導入を検討しながら相次いで断念しており、都の取り組みが英語力を向上させるモデルケースとして全国に波及するかは不透明だ。

授業改善に「意義」

都がスピーキングテストを導入する目的の一つとして掲げるのが、授業の改善効果だ。学習指導要領では、英語の4技能(聞く・読む・話す・書く)をバランスよく習得するように求めているものの、学校の授業は読み書きに偏りがちなのが実情となっている。都教育委員会は、スピーキングテストで生徒ごとの英語力を「見える化」し、各校の授業の成果を客観的に把握して指導の改善につなげたい考えという。

文部科学省も一定の理解を示している。永岡桂子文科相は今月4日の記者会見で、スピーキングテストの実施に伴う授業の改善効果について、「活用は大変意義がある」と語った。ただ、賛否が割れている入試の合否判定への活用には、「(入試の)実施者が判断するもの」と述べ、評価を避けた。

「採点がハードル」

確かに、学習のモチベーションを上げる効果は期待できそうだ。大阪府は公立高入試にスピーキングテストを含む英検など民間試験の結果を点数換算し、聞く、読む、書くの3技能をはかる府の入試の得点と比べて高い方を合否判定に使える仕組みを取り入れている。令和4年度の利用者は3505人で導入当時の平成29年度(345人)から10倍超に増えており、府教委の担当者は「学校や生徒に4技能を指導・習得しようという意識が高まったのではないか」と分析する。

もっとも、府はこの制度の導入に先立ち、本格的なスピーキングテストの導入も検討していた。しかし、「公平な採点の担保など越えられないハードルがあった」(府教委)として断念した経緯がある。

このように、導入を検討しながら「挫折」した自治体は少なくない。

令和7年度入学の公立高入試から制度を見直す長野県もスピーキングテスト導入を検討したが、今年3月に見送りを決めた。県教委の担当者は「全ての受験生に一律に実施できなくても、推薦入試なら導入できるのではないかと議論を進めてきた。だが、採点の公平性の担保や学校側の負担などを踏まえると無理だと判断した」と説明する。

岩手は3年で廃止

一方、岩手県は平成16年度に公立高入試に「英語応答試験」としてスピーキングテストを導入。試験官の教員が個々の受験生と面談する形で実施したが、採点にあたる教員の負担増などから18年度を最後に3年で廃止となった。県教委の担当者によると、試験対策で生徒の塾通いが目立つようになったことも廃止理由の一つ。「都の動きは注視しているが、現状ではスピーキングテスト導入の議論はない」という。

神奈川県でも、「導入に向けた具体的な動きはない」(県教委)。県内にある公立中の校長は「4技能の重要性は理解しているが、すべてを入試に盛り込もうというのは無理があるのではないか」と指摘する。その上で「話す力の育成は高校入学後に手厚く指導して単位認定を厳しくするなど、生徒たちがより真剣に学習に取り組むようになるような制度をつくった方が効果的かもしれない」と語った。

英語スピーキングテスト初実施、来春の都立高入試に活用、採点の公平性で疑念も

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