2003(平成15)年3月、拉致被害者の家族らは米首都ワシントンのダレス国際空港に降り立った。2年ぶりの訪米。前回(01年2月)と大きく違うのは、約半年前の日朝首脳会談で、北朝鮮が日本人拉致を認めたという点だ。
拉致が事実だと判明する前と後では、米関係者の関心も違う。北朝鮮の悪行を米国で改めて説明し、一方的に「死亡」とされた被害者らの救出への協力を訴えるのが訪米の目的だった。
米国では、1年半前の01年9月に起きた米中枢同時テロ以降、「テロとの戦い」が浸透していた。そうしたタイミングで家族らが強調したのも「拉致は現在進行形のテロ」だった。
国務省で家族らを迎えたのはアーミテージ副長官。知日派の元軍人でベトナム戦争に従軍した経歴を持つ。ブッシュ(子)政権の中で目立つ存在だった。
「テロ支援国家に北朝鮮が入っている理由には、拉致も含まれている」