深層リポート

青森発 「青い森鉄道」 コロナ禍が経営直撃も…「地域の足守る」

「地域の足」として大きな役割を果たしている青い森鉄道=青森市(福田徳行撮影)
「地域の足」として大きな役割を果たしている青い森鉄道=青森市(福田徳行撮影)

青森県が鉄道施設を所有し、会社が運行を担う「上下分離方式」を採用する第三セクター「青い森鉄道」(青森市)が12月1日に開業20周年を迎える。記念イベントなどで盛り上がる一方、利用客減少が続き、他の地方路線同様に厳しい経営状態が続く。県に支払う線路使用料の減免で収支をなんとか確保しているが、新型コロナウイルスの感染拡大も重なり、取り巻く経営環境はより厳しいものとなっている。

青い森鉄道が採用する上下分離方式は地域公共交通として安定的に維持、存続させるための方策。自治体が鉄道施設を保有することで運行会社にとっては線路の保守・点検などの経費負担が軽減される一方、自治体に対して線路使用料を支払わなければならない。

同社の場合は収支が均衡する範囲で線路使用料が算定され、これを超える部分については県が減免している。平成14年の開業から令和3年度までの線路使用料計約92億円のうち約73%に当たる約67億円が減免され、いわば税金を充当する形で経営を維持する状態が続いていた。

ただこの間、平成28年3月の北海道新幹線開業に伴い、青函トンネルを走行するJR貨物の列車が同社の施設で機関車の付け替え作業をする対価として国から約6億円の支援を受けられるようになったこともあり29、30年度は線路使用料を全額支払っても7千万円近い黒字化を達成した。

利用促進策として進めた駅の移転や新駅設置も収支改善の要因の一つとなった。23年3月に青森市の「野内駅」を青森工業高校近くに移転。26年3月には同市の青森高校の近くに「筒井駅」が開業し、同駅の利用者が予想を上回る1日当たり1千人を超えるなど、通学・通勤客の利便性が飛躍的に向上した。千葉耕悦社長は「地域の足としてのわが社のニーズを感じている」と話す。

だが、コロナ禍に伴う外出自粛などの影響で利用客が落ち込み経営を直撃。令和2年度は約867万円の赤字を計上した。3年度の旅客運賃収入も約9億9千万円で前年度を7・9%上回ったものの、コロナ禍前の約6割にとどまった。

最終的には線路使用料の減免措置のおかげで約331万円の黒字となったが、コロナの収束が見通せない中、公的支援を受けての収支均衡は財政基盤の脆弱(ぜいじゃく)さを露呈した格好だ。

さらに、今年度第1四半期(4~6月)の事業実績でもビジネス客、観光客が回復しておらず、収入は計画比約7割となった。大規模な集客が見込めるイベント、祭りに関しても3年ぶりに開かれた「青森ねぶた祭」の輸送人員は元年度比約7割だった。

線路使用料について千葉社長は「今年度も減免措置をお願いせざるを得ない状況だが、観光客に期待し少しでも減免額を減らせれば」と話すが、先行きは不透明だ。

上下分離方式は膨大な費用がかかるインフラを鉄道会社から切り離すことで、運行サービスの向上に専念できる利点がある一方、税金が使われる線路使用料の減免が最終的には県民の負担増につながるのではないかとの指摘もある。

千葉社長は「並行在来線は、地域住民の日常生活に欠かすことのできない貴重な交通手段。われわれの大きな使命は地域の足を守ること。いろんな手段、アイデアを出して少しでも経営改善に努めていきたい」と話している。

青い森鉄道株式会社 東北新幹線の延伸に伴い、JR東日本から経営分離された東北線を引き継ぐため青森県と沿線市町などが出資して平成13年5月に設立。14年12月に青森県三戸町目時-八戸間(25・9キロ)、22年12月に八戸-青森間(96キロ)の開業によって「青い森鉄道線」として全線開業した。駅数は27駅。

記者の独り言 平成23年3月の東日本大震災の影響で全国的に深刻なガソリン不足に見舞われたことでマイカーでの取材もままならず、東北新幹線もストップする中、青い森鉄道がいち早く再開したおかげで被災地・八戸市の取材ができた。青森から八戸まで新幹線だと約30分、青い森鉄道では約1時間半かかるが、時間だけでは計り切れない恩恵を実感した。沿線には四季折々の景色が広がり、景勝地も豊富だ。機会があれば一度、のんびりと在来線の旅を味わってみたい。(福田徳行)

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