26日に投開票が行われた台湾の統一地方選挙で、蔡英文総統が率いる与党、民主進歩党は中国への対抗を争点化して劣勢を巻き返そうしたが、奏功しなかった。民主主義の価値を重視する蔡氏自身は台湾で一定の支持を維持しているが、今回の大敗により、2024年1月に予定される次期総統選を前に党内での求心力は一気に低下するとみられる。(台北 矢板明夫)
蔡氏は26日夜、選挙結果を受けて記者会見し、「台湾市民の決定を受け入れる。党主席としてすべての責任を負う」と頭を下げた。その上で「これからは党派を超え、中央と地方が連携し、国民の期待に応えなければならない」と強調した。民進党は選挙戦で、新型コロナウイルス対策や米欧や日本との連携強化などの実績を訴えたが、有権者には物価高など身近な問題への不満が強かった。
蔡氏は18年の前回統一地方選で大敗したが、20年1月の総統選で史上最高の約817万票を得票したことで、党内で絶大な力を誇ってきた。党内にはいくつかの主要派閥があるが、蔡氏は今回の党公認候補者の選定にあたって「党内の対立を避けるため」として、台北市や桃園市などの主要都市で慣例の予備選挙を行わず、自ら主導して各地の候補者を選んだ。