原発の運転期間の延長ルールについて、経済産業省が現行の原則40年、最長60年のルールを踏襲しつつ、原子力規制委員会の安全審査に伴う停止期間や、裁判所の命令で運転を止めた期間を算入しない方向で、最終調整に入ったことが25日、分かった。近く開く有識者会議で政府案として示す。
経産省は今月上旬に開いた有識者会議で、運転期間に上限を設けず、規制委の安全審査をクリアすれば、何度でも延長できる案も示していた。ただ、国会で決めた現行ルールを大きく見直すことには与党内でも慎重論が大きく、古くなる原発をいつまでも使い続けるよりも、ある程度の使用期限を設けて、安全性や発電効率の高い原発へと置き換えていくことを電力事業者に促した方が得策と判断した。
原発は運転すると核分裂反応で原子炉の経年劣化が生じることが知られているが、運転していなければ劣化はほとんど進まないとされる。規制委の審査が長期化する中で、以前から停止期間を運転期間に算入しないよう求める意見は多く出ていた。
福島の事故後に再稼働を果たしたのは既存原発33基のうちわずか10基で、大半の原発が10年以上停止したままだ。停止期間を運転期間に算入しなくてよくなれば、これら原発の実質的な運転期間は10年以上延長されることになる。
経産省が検討しているのは、原発を利用する立場としての運転期間。これとは別に、規制委は安全審査を行う立場で、運転開始後30年以降は最長10年ごとに設備の劣化評価を義務付ける制度の新設を検討しており、今後はこれら2つのルールに基づき、各原発の運転期間が決まる見通しだ。
原発の運転期間に関するルールは、東京電力福島第1原発事故を受けて導入された。運転期間を原則40年とした上で、1回に限り20年の延長が認められている。ただ、このままだと近い将来、運転期限を迎える原発が相次ぎ、電力の安定供給への懸念や、2050年までに温室効果ガス排出量を実質ゼロとする目標の達成が困難となることから、岸田文雄首相が原発の運転期間の延長を検討するよう指示していた。(蕎麦谷里志)