電子マネー詐欺を連続撃退 コンビニ店員親子が罠を見抜く5つのポイント

親子で協力し、詐欺を防いだ岩崎智子さん(左)と葵さん=神戸市東灘区
親子で協力し、詐欺を防いだ岩崎智子さん(左)と葵さん=神戸市東灘区

高齢者を中心に深刻な被害が広がる特殊詐欺。ここ数年は、パソコンがウイルスに感染したと虚偽の警告をし、修理費名目で電子マネーを購入させてだまし取る「サポート詐欺」が増えている。巧妙な手口にだまされる人は多いが、被害者が電子マネーを購入しようとする店で、店員が声をかけて水際で被害を防ぐことは可能だ。神戸のコンビニエンスストアには2度被害を食い止めた親子がいる。どうすれば被害は防げるのか、親子の経験からポイントを探った。

「パソコンの修理がしたいのですが、電子マネーのカードはどこですか?」

今年5月14日、神戸市東灘区のセブンイレブン神戸住吉本町店を訪れた60代の男性が、店員の岩崎智子さん(51)に尋ねてきた。購入金額を聞くと、4万円という。金額の大きさや電子マネーの用途を不審に思った岩崎さんは、同じ店で働く娘の葵さん(22)に相談。詐欺だと確信し男性に伝えようとした。

しかし、なかなか信じてもらえない。「私が不安なので、警察に相談してもよいですか」。岩崎さんは相手の気持ちを損ねないように声をかけて110番通報し、捜査の結果、詐欺と判明した。

ニュースで知って

男性が被害に遭いかけたのはサポート詐欺と呼ばれる手口。パソコンの画面にウイルス感染したと虚偽の警告を表示させ、復旧のために必要な費用としてコンビニなどで電子マネーを購入させ、カードの番号を伝えさせてだまし取る。実在するソフトメーカーなどをかたっているため虚偽と見抜きにくく、ここ数年で急増している。

サポート詐欺を含む架空料金請求詐欺では、電子マネーを購入させる手口が使われる。犯人側からすれば、コンビニなどで気軽に買える電子マネーがだまし取りやすいという背景があるとみられる。

岩崎さん親子が被害を防いだのは今回の男性で2回目。最初は令和2年8月、携帯電話の料金が未納だというショートメールを受け取ったという女性が、電子マネーを買いにきたときだ。

その頃からすでに電子マネーを使った詐欺の手口は広まっており、ニュースで知っていた葵さんが岩崎さんに相談して被害を食い止めた。

親子の連携プレー

岩崎さんはこの店で働き始めて15年以上。午前9時から午後1時に勤務することが多く、常連客が中心で見慣れない人が来るとわかるという。詐欺被害に遭っている人には、あまり店で見かけたことがない▽高齢▽購入金額が大きい▽電子マネーの使い方を知らない▽急いでいる-といった特徴がある。

詐欺被害を防ぎ、感謝状を贈られた岩崎智子さん(右)と葵さん。左はオーナーの松原達昭さん=兵庫県警東灘署
詐欺被害を防ぎ、感謝状を贈られた岩崎智子さん(右)と葵さん。左はオーナーの松原達昭さん=兵庫県警東灘署

岩崎さん親子は、客が電子マネーをレジに持ってきた際に、「最近電子マネーを使った詐欺が増えているので気を付けてくださいね」と声をかけ、購入金額や用途を確認するようにしている。「パソコンの修理費用に必要」と聞けば、詐欺を疑い警察に通報してもよいか確認するという。

しかし、詐欺だと疑われるのが気に食わず、怒る人もいる。それでも詐欺かもしれないと伝えるのは、「お客さんのため」。葵さんは「『詐欺だったらどうしよう。あの時、声をかければよかった』とずっともやもやした気持ちでいるなら、怒られたとしても声をかける」と決めている。

せっかく通報までこぎつけても、帰られてしまっては詐欺だったのか特定できず、再び被害に遭うリスクもある。警察官の到着まで店内にとどまってもらわなければならないが、警察を呼ばれることに抵抗がある人や詐欺にだまされかけたことを恥じる人も多い。

そんなときは、親子で声をかける。「警察の人に一度みてもらえれば安心ですよ」「私も電子マネーの使い方がわからないんです」「だますなんて、犯人が悪いんですよ」。無事に被害者を警察に引き合わせたときは安堵(あんど)するという。

兵庫県内で昨年、水際で特殊詐欺を防いだ事例は1073件。うちコンビニ店員が最多の31%、続いて金融機関職員24%、親族21%となっている。

卑劣な詐欺被害を止める最後のとりでともなっているコンビニ店員。岩崎さん親子は「これからも詐欺に遭っているかもしれないお客さんに声をかけていきたい」と誓った。(弓場珠希)

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