【がん電話相談から】前立腺がん ホルモン治療延長で骨粗鬆症心配

Q 70代男性です。平成24年7月にかかりつけのクリニックで血中PSA(前立腺特異抗原)値の上昇を指摘され、精密検査の結果、前立腺がんと診断され、前立腺全摘除術を受けました。

その後、10年の間に局所再発(前立腺の周りの再発)し、恥骨、腰椎などに転移。手術を受けるとともに放射線治療やホルモン治療を続けています。

令和3年からは前立腺がん細胞の増殖を抑える抗アンドロゲン(男性ホルモン)剤であるイクスタンジ(一般名エンザルタミド)を1年の予定で追加して始めました。最近の診察で担当医からもう1年のホルモン治療の延長をすすめられました。

その場合、副作用として骨粗鬆症(こつそしょうしょう)のリスクが高くなるのではないかと心配で迷っています。

A 10年前に手術をし、その後再発したため放射線をあて、転移が判明するたびにイクスタンジを服用し、骨転移の治療に使う注射薬のゾメタ(一般名ゾレドロン酸水和物)も使ってきたとのことですね。ホルモン治療を放射線治療と一緒に行ったり、やめたりしているのはあなた自身の強い希望からですか?

Q はい、そうです。

A 一般的に、前立腺がんでは骨などに転移がある場合、放射線をあてるのは、痛みが出たり、がんによる骨折のリスクが増えたりしたときです。

また転移がある人に関しては、ホルモン治療を持続的に行うのが一般的です。あなたの場合は、リュープリン(一般名リュープロレリン)注射とイクスタンジによる治療がこれにあたります。

ただホルモン治療は続けるうちに、いつかは効かなくなってきます。副作用対策に加えて、効果が切れてしまうのを先延ばしにしようと、休薬と投薬のサイクルを繰り返す間欠的ホルモン治療を始めたのだと思います。

さらに、転移巣に対する効果を上げるため、並行して目で確認できるがんの病巣を放射線治療でたたいているのでしょう。これを転移指向性治療といいます。確立された治療法とまではいえませんが、それでも手術から10年もたった今、それなりに効果が出ているようなので、あなたに合った治療法なのだと思います。

Q 圧迫骨折も経験しました。このまま治療を続けるにあたり、また起こるのではと心配です。

A ホルモン治療の影響で骨粗鬆症が進み、圧迫骨折した可能性はあります。しかし、骨粗鬆症へのリスクについては、今使われているゾメタである程度緩和できると思います。ゾメタは破骨細胞の働きを抑えることで骨を丈夫にし、がんの進行を防ぎます。破骨細胞が働くと、がんも広がりやすくなります。そのため、ゾメタの投与は効果があり、デメリットはほぼないでしょう。

Q ホルモン治療は1年延長したほうがいいでしょうか。

A 続けられたほうがいいでしょう。持続的な治療に不安があるようですが、これまで副作用にそれほど困っていなければ、基本的に延長したほうがいいと思います。

今までは、転移指向性治療と間欠的ホルモン治療を組み合わせて、うまく病気をコントロールできている状態にあると判断できます。

ただ、この治療をいつまで続けるかという明確な指針はありません。転移の進行が今のままゆっくりで、治療をやめなければいけないような副作用が出ずに、効果がある間は今の治療を続けていきましょう。

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がん研有明病院の院長補佐で泌尿器科部長の米瀬淳二医師

回答は、がん研有明病院の院長補佐で泌尿器科部長の米瀬淳二医師が担当しました。

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