【ニューヨーク=平田雄介】国連安全保障理事会(15カ国)は21日、北朝鮮による18日の大陸間弾道ミサイル(ICBM)発射を受けて緊急会合を開いた。13カ国が安保理決議に違反する発射を批判し、米国は議長声明案をまとめる用意があると表明したが、中国とロシアが北朝鮮を擁護する姿勢をみせ、今回も一致した対応を取れなかった。
年初来のミサイル発射を受けて開催された安保理会合は今年10回目。米国のトーマスグリーンフィールド国連大使は「拒否権を持つ2カ国が安保理の一致した対応を妨げ、北朝鮮を助長し、世界を危機にさらしている」と演説し、中露の態度を厳しく批判した。
これに対し、ロシアのエフスティグニエワ国連次席大使は「米国が、制裁によって北朝鮮の一方的な武装解除を迫ったことが今起きていることの原因だ」と述べ、米国を責める姿勢を見せた。中国の張軍国連大使も「北朝鮮を常に非難し圧力をかけたりすべきではない。まずは米国が誠意を見せ、非核化に向けた対話再開のため、制裁を緩和すべきだ」と主張した。
ただ、北朝鮮は核戦力を強化したうえで、その使用条件などを定め、非核化交渉に応じない姿勢を明確にしている。会合では、フランスのドリビエール国連大使が「制裁緩和は全く非論理的で、圧力は維持しなければいけない」と強調するなど、制裁緩和を支持する声は広がらなかった。
中露は、北朝鮮が核実験やICBM開発につながる弾道ミサイルを発射した場合に石油の対北輸出をさらに制限すると定めた2017年12月の安保理決議に賛成している。
にも関わらず、中露は今年5月、安保理に提出された制裁強化の決議案を「今は制裁を緩和すべきときだ」と拒否権で否決し、国連総会で非難された。
この一件は、「拒否権乱用の一例として、現在進行中の安保理改革の議論でも取り上げられている」(トーマスグリーンフィールド氏)といい、中露に向けられる国際社会の視線は厳しくなっている。