人間・森保一

㊥手堅い采配 対話から生み出す最適解

カナダとの強化試合の前日練習で笑顔を浮かべる日本代表の森保一監督=ドバイ(村本聡撮影)
カナダとの強化試合の前日練習で笑顔を浮かべる日本代表の森保一監督=ドバイ(村本聡撮影)

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サッカー日本代表監督の森保一は、選手と多くの言葉を交わす。誰よりも早くピッチに顔を出し、最後まで練習を見届け、主力、控えを問わず、声に耳を傾ける。2012年から5年半率いたJ1広島で、3度の優勝を支えた元日本代表MF青山敏弘(広島)は「僕の中で監督という概念を変えてくれた人。一緒に(チームを)作っている感覚だった」と述懐する。

策士ではない。対話を重ね最適解を見つけ出す。スタッフとの距離感も同じ。広島時代から参謀役を務める日本代表コーチの横内昭展は「監督は自分の中で答えが出ていても、まず僕らの意見を聞く」と明かす。情報をすべて集約したうえで「勝利のために、一番現実的な戦い方を選ぶ」(青山)のが森保流だ。

独善的な判断をしないため、広島で強化部長を務めた織田秀和(現J2熊本GM)は、「奇をてらった策や人選はしない」と振り返る。腹を決めたら貫く。15年にはJ1リーグ34試合中33試合で、絶対的エースだった佐藤寿人を後半途中から浅野拓磨(現ボーフム)ら若手に代えた。非情にも映る采配は〝必勝パターン〟となり、自身3度目のリーグ優勝を手繰り寄せた。

柔軟さも併せ持つ。青山は日本代表の一員だった19年1月21日のアジア・カップ決勝トーナメント1回戦、サウジアラビア戦が印象深いという。想定した守備がはまらず、前半20分に先制しても苦しい展開でハーフタイムを迎えた。選手の声は「今のやり方は違うんじゃないか」だった。聞き終えた森保は「よし、OK」と一言。ピッチの判断で戦い方を修正し、1-0で接戦をものにした。

9月のドイツ遠征では、「共通認識を持つべき」との選手の提案を取り入れた。前線からのプレスのかけ方、攻撃を仕掛ける際のポジショニングなどを細部まで確認した。選手たちが同じ「絵」を描ける土台ができた。長く代表でプレーする長友佑都(FC東京)は「『聞いてもらえる』という森保さんのスタンスがなければ、こんなに意見交換はできない。聞いて、改善してもらえるのは大きい。いいチームになっている」とうなずく。

1次リーグでは優勝経験があるドイツ、スペインが待つ。森保は「個の良さを生かしながら、組織として互角に、そして、最後に勝てるように準備していきたい」と考えている。対話を続け大舞台に向かう。=敬称略

(川峯千尋)

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