泌尿器科のイメージは…受診率が低い実態
マッキーさんが視聴者558人から回答を得たアンケートで「泌尿器科に対して伝えたいことは何か」を尋ねたところ、304人が自由回答に意見を寄せ、そのうち56人が「もっと男性が受診しやすい場所にしてほしい」と答えた。
泌尿器科のイメージは「性病にかかった人がいくところ」「自分が受診するところを人には見られたくない」「怖い」といったものだったという。
国の調査でも同じような傾向が明らかになっている。厚生労働省が今年実施した「更年期症状・障害に関する意識調査」で、更年期症状を自覚しているのに、医療機関を受診していない男性の割合は、40代で86・6%、50代も86・5%にのぼっている。
「男性更年期じゃない?」妻の一言に救われた
では、泌尿器科に実際にかかった人は、どんな経緯で受診を決意したのだろう。
今年1月から受診を始めたという茨城県の会社員男性(47)。きっかけは、脳の手術を受けた同僚男性が、治療で男性ホルモン補充療法を受けていると聞いたことだった。
「男性ホルモンを注射している同僚は、階段の上り下りを軽々とこなすようになっていた。片や自分は休日に寝て過ごしても疲れがとれず、やる気も出ない。泌尿器科というと、性的な病気を治す場所という印象しかなかったが、男性ホルモンを補充すると元気になることに興味をもち、検査だけでもと思って受診しました」
男性更年期障害の診察を行っている病院でホルモン値を調べたところ、一般男性の3分の1程度しか、男性ホルモンが分泌していないことが分かった。男性更年期障害との診断を受け、治療を続けている。「いまでは運動する意欲も出てきた。ホルモン値も回復傾向にあります」と語る。
埼玉県に住む公務員男性(58)は昨年春から気分が落ち込み、精神科にもかかったが、鬱病の診断は下されず、1年以上、症状に悩んでいた。
「集中力が続かず、スケジュール管理もおろそかになり、仕事に支障が出るように。倦怠(けんたい)感が強く、帰宅して夕食を取った後、すぐに寝てしまう状況でしたが、異変を気遣ってくれた妻が『男性更年期障害じゃないか』と助言をくれ、インターネットで調べたところ、チェック項目の多くに自分の症状が当てはまっていました」
雑誌やテレビで男性更年期障害について見聞きしていたという妻(58)は「気がつくきっかけは、夫の頻尿でした。夜、トイレのために2、3回起きるようになったと話していたので、聞きかじっていた知識と夫の症状が重なりました」と振り返る。
男性は10月末に、男性更年期障害を専門に診てくれる泌尿器科を受診。男性ホルモン値などを調べる血液検査や尿検査の結果を待っている現在の心境を語ってくれた。
「最初の症状は精神的なものだったので、泌尿器科はピンときませんでしたが、妻の一言で専門医につながることができました。受診して今感じているのは安心感。ホルモン値が明らかになったら、自分に必要な治療を前向きに受けようと思います」
◇
性に関する知識を十分に学ばないまま過ごしてきた中高年世代が、自身の体調の変化だけでなく、職場での同僚や部下に対する健康配慮、家庭における性教育の場面などで、困難に直面している。そんな大人たちの戸惑う声を拾いながら、性教育の学び直しにつながる記事を随時お届けします。