学び直す大人の性教育

「男性として自信失う」打ち明けられない性の悩み 


コメント欄に殺到する不安や本音


「こんにちは。看護師マッキーです」

えんじ色のナース服姿の女性が、朗らかな声で視聴者に呼びかける。

午後10時。動画投稿サイト「ユーチューブ」に連日、新たなコンテンツを配信しているのが「メンズヘルス専門チャンネル・看護師マッキー」だ。

登録者数9万人超。その9割以上を40歳以上の中高年男性が占めている。

運営するのはフリーランスの看護師マッキーさん。今年9月、日本メンズヘルス医学会のセミナーで、男性更年期障害の認知を広げる必要性を訴えるなど、男性特有の健康課題の解決に向けた活動に力を入れている。

メンズヘルスの情報を発信している看護師マッキーさん
メンズヘルスの情報を発信している看護師マッキーさん

小児科や泌尿器科などで10年以上勤務し、2年前からユーチューブで男性特有の悩みをテーマに動画投稿を始めた。

当初はアダルトコンテンツだと勘違いしている人も散見される状況に、戸惑ったというマッキーさんだが、コメント欄の書き込みを見ると、ほかでは相談できない悩みを打ち明けてくれる男性も少なからずいたという。

「妊活中の男性から、勃起はするが射精に至らないという悩みが寄せられました。精神的なプレッシャーから副交感神経と交感神経のバランスが崩れていると考えました。勃起は副交感神経が優位のとき、射精は交感神経が優位のときに起こります。なぜ射精に至らないのかという医学的な知識に加え、『男性は視覚的な刺激に反応するので、パートナーの女性にコスプレしてもらうなど遊び心も取り入れて、義務感を忘れることが大切ですよ』とアドバイスしたところ、男性から『ストレスフリーの状態で性行為でき、数カ月ぶりに射精ができた。妻も泣いて喜んでくれた』という感想をもらい、2カ月後に妊娠したという報告を受けました。誰かの役に立てたという実感が、動画を配信する動機につながっています」

夜も朝も自慰行為をしているが依存症なのか、包茎のままで大丈夫か、射精の勢いがなくなってきたのはなぜか。大人の男性たちから寄せられる質問も多くは、下着の中の悩みだという。

「男性機能についての医学的な知識をちゃんと学んでいないことが不安を招いている原因ではないか」とマッキーさんは受け止めている。


男性機能低下は重大疾患に気がつくバロメーター


マッキーさんの動画では、男性機能について取り上げることが多い。それは、男性器の働きが重大な疾患に気がつくきっかけにもなるからだ。

「例えば、陰茎動脈は心臓や脳の動脈よりも直径が細く、動脈硬化の初期症状が現れやすいといわれています。勃起障害は狭心症や脳梗塞の前触れの可能性があるのです」

「勃起する」という現象を〝色眼鏡〟で見れば卑猥(ひわい)なイメージで受け止められがちだが、医学的にとらえれば、自律神経が正常に機能している、動脈硬化が進んでいない、つまりは健康だと、マッキーさんは説明する。

ユーチューブ番組で「男性更年期障害」についても積極的に配信している
ユーチューブ番組で「男性更年期障害」についても積極的に配信している

男性更年期障害についても、症状やチェック項目などを繰り返し伝えている。下着の中のことで不安があれば、専門医である泌尿器科にかかることの大切さを動画で訴えているが、中高年男性にとって、泌尿器科が縁遠い存在であることも分かってきた。

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