EV課税、政府手探り 走行距離や出力に応じた課税案も

電気自動車(EV)の普及で減少するガソリン税などの代わりとなる新たな税制度を模索する議論が進んでいる。政府内ではEVの走行距離に応じた課税案や、出力性能に応じて課税する案も浮上。ただ、両案ともEV普及に向けた阻害要因になり得ると、自動車業界などからの反発は強い。走行距離への課税案は数年前から提示されているが、税負担の公平性を確保する妙案は見いだせておらず、方向性の明示までの議論は長期化も予想される。

現在の日本の自動車関連税は車の購入、保有、利用の各段階で徴収され、基本的にガソリンなどの石油燃料で動く車を基準に制度が設計されている。保有者が毎年支払う自動車税はエンジンの排気量が大きいほど多く、利用の際にはガソリンや軽油など燃料価格に税金が含まれる。

ただ、ガソリンを使わず、排気量ゼロのEVが普及すれば、現在の税体系の概念が崩れ、税収の大幅な減少は不可避とされる。既に少子高齢化や燃費性能の高いハイブリッド車(HV)普及などを背景に、車関連の税収はこの15年間で3割近く減収していると、財務省は試算する。

こうした傾向を踏まえ、10月に開かれた政府税制調査会(首相の諮問機関)の会合では、電池を搭載するEVはガソリン車に比べて車体が重く、道路への負担が大きい観点からも、走行距離に応じた課税を検討すべきだとの意見が出された。具体案は示されていないが、衛星利用測位システム(GPS)で車の走行距離を測定し課税するドイツの仕組みなどが想定される。

しかし、走行距離を把握するには、自動車の走行データを政府が管理する必要があり、プライバシー保護の観点から反対する声もある。「車が生活必需品で走行距離が長くなる地方住民からの反発も強い」(自動車業界関係者)。

一方、地方税を所管する総務省は、モーターで駆動するEVの出力に応じて課税する案を検討している。EVの出力はガソリン車の馬力に相当。値(キロワット)が大きければ加速や高速走行の性能が高く、高級車ほど出力が大きい傾向がある。

ただ、「高い出力はEVの航続距離の向上にも貢献する。そこへの課税は(性能向上に向けた)技術的なイノベーション(革新)を阻害し、EV普及にも逆行する」(経済産業省関係者)との反論もあり、現状は両案とも業界や利用者の理解を得られていない。(西村利也)

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