【ワシントン=坂本一之】米中間選挙で野党の共和党が下院の多数派を4年ぶりに奪還し、民主党のバイデン大統領は今後、政権運営を巡り下院多数派の共和党と対峙(たいじ)することになる。大接戦を制して上院の多数派を維持した民主党だが、下院を失ったことでバイデン氏は政策実行が難しくなり、求心力が低下する恐れもある。
バイデン氏は2021年1月の政権発足から1兆ドル規模の「インフラ投資法」や4300億ドル超の「インフレ抑制法」など大規模な経済対策を成立させ、新型コロナウイルス禍からの回復や物価高抑制を進めてきた。
しかし、大規模な財政支出に反対の共和党が下院を握ったことで、経済対策の法案をこれまでのように成立させることができなくなる。すでに成立させている経済対策の効果はこれから本格的に表れてくるものの、今後の経済悪化には素早く対応できない。
さらに、今回の中間選で争点となった人工妊娠中絶の対応も難しい。
保守派優位の連邦最高裁は6月、人工妊娠中絶を憲法で保障された権利としていた判決を覆し、中絶問題を各州の判断に委ねた。
今回の選挙戦でバイデン政権は、妊娠中絶などの権利が認められるか否かの「選択の選挙」だと呼び掛けるだけでなく、民主党が上下両院の多数派を維持できれば中絶の権利を明記する法案を成立させると訴えてきた。民主党が下院で多数派を維持できなかったことで、中絶の権利などを求める支持者の「期待」が「失望」に変わる可能性がある。
一方、下院を制した共和党も課題を抱える。中間選で当選したトランプ派候補の間では、下院共和党トップのマッカーシー院内総務が議長に就任することに反発する声も上がった。
米政治評論家は「共和党内で意見対立が起き、下院の共和党幹部がうまく議会運営をできない可能性がある」と指摘する。
共和党が内紛に明け暮れてバイデン政権に打撃を与えられなければ、24年に行われる大統領選や議会選で共和党の勝利が遠のくことになる。