岸田首相発言全文「核の使用 人類に対する敵対行為」

G20サミットを終え、取材に応じる岸田首相=16日、インドネシア・バリ島(共同)
G20サミットを終え、取材に応じる岸田首相=16日、インドネシア・バリ島(共同)

岸田文雄首相が16日、インドネシア・バリ島での20カ国・地域首脳会議(G20サミット)終了後、記者団に語った内容は以下の通り。

■質疑応答

――ロシア製のミサイルがポーランドに着弾し、急遽開催された先進7カ国(G7)と北大西洋条約機構(NATO)首脳会合でのやりとりは。米国のバイデン大統領はロシアから発射された可能性は低いとの認識を示しているが、受け止めは

「G7、NATO首脳は、ロシアがウクライナ各地をミサイルで攻撃をしていることを強く非難し、その中で起きた本件爆発について、ポーランド側の調査への全面的な支持をすることで一致した。わが国は、来年のG7議長国で、そしてインド太平洋地域からこの会議に出席している唯一のメンバーだ。ウクライナ情勢について、国際秩序の根幹に関わる問題でインド太平洋の安全保障と不可分であること、G7とNATOの連携が重要であるということの2点を特に強く強調した。今年2月、ロシアによるウクライナ侵略が始まって以来、G7の結束が重要であるということを再三、強調してきた。6月には、NATO首脳会議に日本の首相として初めて出席するなど連携も重視してきた。こうした立場から、日本がG7、NATO緊急首脳会合において、連携を改めて確認できたことは大変有意義だった」

「バイデン大統領の今回の爆発に対する見方について、わが国としては、アメリカをはじめ各国とさまざまな立場で情報交換をしている。ポーランドの調査を尊重するという立場を確認しており、調査や検証の状況を引き続き注視していきたい。現状はその立場だ」

――今の時点ではロシアに対する非難には当たらないという認識か

「ポーランドの爆発については、さまざまな見方がある。ただ、今日の緊急首脳会合の中でも、そもそもウクライナの国内に対し、各地でロシアにミサイル攻撃が続いていることを非難した上で、今回の爆発が起きた点に留意し、実際はどうであったのかの調査を注視する。これが基本的な考え方だったと思う。ロシアによるウクライナ各地の民間施設等に攻撃が連日続いていることは強く非難した上で、今回の件の実態についてどうなのか。検証、調査を進めていくという考え方を各国、表明していると思う。日本も同じ立場だ」

――G20首脳会議では、ロシアによるウクライナ侵略などを踏まえた首脳宣言が採択された。この受け止めと、会議全体の議論についての評価は

「ロシアによるウクライナ侵略が続く中でエネルギーや食料安全保障などの重要な課題が議論され、こうした課題について意見を交わす貴重な機会になったと受け止めている。日本としても、来年のG7議長国という立場を踏まえ、日本の立場や取り組みを積極的に発信する機会とした。会議では日本をはじめ多くの国々が、ロシアによるウクライナ侵略を強く非難した。私からは『ロシアによる核の脅かしは決して許すことはできない。ましてや使用は決してあってはならない』といった旨を強調をした。複数の国からも同趣旨の発言があった。こうした議論を踏まえ、G20バリ首脳宣言が発出された。首脳宣言を取りまとめた(インドネシアの)ジョコ大統領の強いリーダーシップに敬意を表したい」

「首脳宣言の中には、大多数の国がウクライナでの戦争を強く非難したこと、G20として核兵器の威嚇・使用も受け入れられないことが盛り込まれた。特に核の威嚇や使用に関しては、人類に対する敵対行為であり、最大限の強い表現で盛り込むべきということを日本から特に強く働きかけた。この表現が盛り込まれたことは、来年のG7広島サミットへもつながる大きな一歩だったと高く評価する。G7広島サミットでは、核の問題も非常に重要な課題であると考えている。議長国として議論をリードしていきたい」

――一昨日に行われた米中首脳会談で対話を継続していくことが確認されたが、台湾問題を巡っての溝は埋まっていない。受け止めは。明日は日中首脳会談も行われる。日本と中国の間で安全保障上の懸念がある中、大局的に日中関係をどのようにしていく考えか

「米中首脳会談においては、経済問題、人権問題、台湾問題、ウクライナ情勢、北朝鮮情勢についても幅広い議論が行われたと承知をしている。第三国間の会議について、私の立場から何かコメントすることは控えなければならないが、米中両国の関係は国際社会全体にとっても極めて重要だ。今年(5月)の日米首脳会談でもバイデン大統領と、中国を巡る諸問題への対応に日米で連携していくことを確認している。米中の議論も念頭に置きながら、日米関係についても連携を強化していきたい」

「明日、バンコクで習近平国家主席と日中首脳会談を行う予定だ。日中関係については、従来申し上げてきたが、日中間にさまざまな可能性がある一方、さまざまな課題や懸案もある。この中で、主張すべきはしっかり主張し、対話をしっかりと重ね、責任ある行動を求めながらも、協力すべき点については協力をするといった、建設的かつ安定的な日中関係を構築していく。こうした姿勢で臨んでいきたい」

――日中首脳会談では、尖閣諸島(沖縄県石垣市)や台湾に関しても協議するか。また、今日の日独首脳会談で中国に関して話題になったか

「会談に先立ち私から予断をもって話の中身について申し上げることは控えなければならない。ただ、先ほど申し上げたような基本的な考え方に基づき、日中関係を進めていける会談にしたい。また、ドイツとの間では、中国が話題となった。意見交換を行った」

――内政について、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)に関する被害者救済新法の政府内での検討状況や進捗状況は

「社会的に許容しがたい悪質な勧誘行為を禁止することを主な内容とする被害者救済新法の策定は、政府が急ピッチで検討を進めている。まずは法案の土台として、寄付適正化の仕組みのイメージを取りまとめて与党に示し、議論を開始していただくとともに、(自民党の)茂木幹事長には、今週中にも与野党協議の場で議論するよう指示した。与野党の皆さまの意見も拝聴した上で、今国会に法案を提出できるよう、作業を進める。この後、タイにおけるアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議などに参加予定だが、当初同行予定だった木原(誠二)官房副長官は、日本にとどまり、新法の調整と国会対応にあたってもらうこととした。こうした対応で、新法の提出に向けて政府として、精力的に作業を進めていく」

――日本国内の新型コロナウイルスの感染状況について、全国で新規感染者が2日連続で10万人を超えた。これを受けて日本医師会などは第8波に入ったという認識を示したが、現状の感染状況の認識と、人の往来が増える年末年始に向けた対応は

「出発前もコロナ対策について触れ、私の思いを申し上げた。出発前の段階から、感染の拡大が指摘をされていたことに対し、(政府の新型コロナウイルス感染症対策分科会の)尾身(茂)会長をはじめ、4人の専門家の方々から直接話を聞くなど状況について意見交換を行った。その上で、まずはワクチンの接種を進めることが重要との意見を踏まえ、政府として、できるだけ多くの方々にワクチン接種の重要性を理解していただき、受けていただけるよう働き掛けにより力を入れていく。寒い季節を迎えつつある中、寒い地域において特に感染拡大のペースが速いという指摘もある。換気が大事だという点について改めて国民の皆さんに、ご協力をお願いしていかなければならない。ワクチンや国民の皆さんの協力と合わせて、政府自身も危機感をしっかり持っていかなければならない。発熱外来や電話、オンライン診療など、医療提供体制の確保に向けて自治体の協力も得ながら、しっかりと体制を今まで以上に充実させていく。こうしたことを出発前にも申し上げたが、政府としてより強く推し進めていきたい。感染状況については、しっかり注視をしながら政府として国民の命や健康を守るために、最善の努力をし、万全の体制を用意していきたい」

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