先月末、ジャイアントパンダ来日50周年の記念切手を求めて東京・上野公園に長い列ができるなど、電子メールの時代とはいえ、切手人気は健在のようだ。日本人は古来、精魂込めて作られた「小さきもの」に魅せられ、日常生活にもささやかな美を積極的に取り入れてきた。身近なデザインの知られざる世界を紹介する本が、注目を集めている。
もらった封書やはがきを手に「こんな切手があるんだ」と心躍ることはあっても、それをデザインした人の存在に思いをはせることは正直、なかった。『切手デザイナーの仕事』(間部香代著、グラフィック社・1980円)は、日本郵便切手・葉書室にいる切手デザイナー8人を取材した本。まず切手デザイナーという職種(日本郵便の社員)があること、そして日本の切手がたった8人でデザインされているという事実に驚く。
花の名手もいれば、鉄道や城などのシリーズもので定評があったり、物語性のある切手を得意としたり…とそれぞれに個性がある。経歴もさまざまで、美大からの新卒採用者や化粧品会社などを経た転職者のほか、郵便配達員という異職種から転身した人も。世の中に切手収集を趣味とする郵趣家は多く、切手デザイナーのトークショーを開けば会場が満席になるらしい。