「鬼筆」越後屋のトラ漫遊記

岡田阪神にウィーラーは適応、円安で大苦戦の外国人補強

勝ち越し打でナインとタッチする巨人のウィーラー(撮影・林俊志)
勝ち越し打でナインとタッチする巨人のウィーラー(撮影・林俊志)

修整を迫られる岡田阪神の新外国人獲りの〝終着駅〟にはウィーラー内野手(35)やグラシアル内野手(37)の姿があるのかもしれません。今季在籍した外国人7選手のうち6選手を解雇した阪神は岡田彰布新監督(64)の方針の下で野手2名、投手2名の新外国人獲りを目指していますが、高知・安芸秋季キャンプで球団の調査リストを見た指揮官は「外国人もほんまおらんよなぁ」と落胆の表情でした。秋季キャンプを激励に訪れた藤原崇起オーナー(70)が〝浮いた11億円〟を出し惜しむ?発言を行ったことで獲得できるレベルも低下…。新監督が渇望する右の強打者を模索するならば、意外な名前が急浮上…かもしれませんね。

メジャー年俸はインフレで破格の条件

海の向こうの大リーグからつい最近、届いたニュースが阪神の、いや日本プロ野球界全体の〝大苦戦〟を鏡のように映し出しているのかもしれません。昨季まで年俸2億6千万円で阪神に在籍していたスアレス投手(31)がパドレスに巨額契約で残留したことが発表されました。来季から5年総額4600万ドル(約65億3千万円)で契約を延長したことが明らかになったのです。

スアレスは昨オフ、パドレスに移籍。今季は45試合にリリーフ登板し、5勝1敗1セーブ、防御率2・27の好成績を残し、ポストシーズンでも大活躍。シーズン終了後には自身が持つ来季年俸500万ドル(約7億1千万円)の選手オプションを破棄し、フリーエージェント(FA)後も残留交渉を継続していたのですが、夢のような大幅昇給を勝ち取ったのです。

ソフトバンクに入団した2016年の年俸は5千万円ですから、そこから7年で給料は20倍以上…。もうアメリカンドリームそのものですが、わずか1シーズンの活躍でここまでの昇給を勝ち取れる現在の大リーグは超インフレの世界でもあります。そういえば大谷翔平選手(28)もシーズン終了直前にエンゼルスと1年3千万ドル(約43億円)で契約延長しましたね。大リーグ30球団のメジャー最低年俸は57万500ドル(約5990万円)。大リーグの平均年俸は今季の開幕時で441万4184ドル(約5億5600万円)です。

主力級の選手達は目ん玉が飛び出しそうな破格の条件を得ていて、メジャーに在籍しているだけでも約6千万円の年俸です。こうした状況下で、たとえ控え選手であったとしても、メジャーの選手達が日本に来ることにメリットを感じないのは当たり前です。なので日本球界に移籍する可能性がありそうな選手のリストは阪神だけではなく、どこの球団もマイナー(3A)中心で、元メジャーリーガーといっても、果たして日本のプロ野球で主軸を任せられるのか? といったレベルの名前が連なってくるわけです。

コロナ禍で厳しい球団の財政事情

そこに来て、このところの円安が影響しています。1ドル150円ならば、1ミリオンダラーは1億5千万円です。2ミリオンで3億円…。「現状の力量と獲得する価格にどうしてもアンバランスさが際立ってしまう。この選手が3億円?となると、球団の獲得リストに載る選手はもっと安く獲れる選手になり、必然的にスケールも落ちる」とは球界関係者の話ですね。

このコラム(「岡田新監督は11億円を新助っ人に投資すべき、強打の右打ち獲得が来季の命運を握る」=10月25日アップ)でも書きましたが、岡田新監督を迎えた阪神は今季、在籍していた7人の外国人選手のうちケラー投手(29)を除く6選手をリリースしました。浮いた年俸の総額は11億700万円。その浮いた資金で新外国人選手を獲れ! と書いたわけですが、金額に見合わない力量の選手を闇雲に獲るわけにはいかないですね。

高知・安芸タイガータウンの秋季キャンプを激励に訪れた藤原崇起オーナーは7日、外国人選手獲得に金庫を開放するのか? と聞かれると「そんなことありませんわ。やっぱりコロナ禍がありましたからね」と発言したようです。経営者としては投資に見合った人材なのか? をチェックするのは当たり前。会社の財政的に1人の外国人選手に4億も5億もかけられず、では3億の値打ちはない選手を下駄を履かせて無理して獲得するバクチも打てないとなれば、その後の道筋は薄っすら見えてきます。

狙い目はFAの外国人

その直後、球団本部の国際スカウトが新外国人候補のリストやビデオを持って安芸にやってきました。それらを見た岡田監督の言葉は「外国人もほんまおらんなぁ。レベルが下がっとるよな」でした。年俸2億円未満に抑えることができる選手層のリストを見るならば、直後の感想は「ほんまおらん」となりますよね。

日本プロ野球のレベルが上がり「来たら無条件にクリーンアップを期待」という時代はとっくに過ぎ去っています。そこに大リーグのインフレ・レートと円安がからみ、かつては日本にやってきたレベルの選手達の獲得条件がつり上がっていることを忘れてはいけません。なので中日などはドミニカに立浪監督自らが足を運び、スカウティングを行っているわけですね。

しかし、岡田阪神にとっては右打ちの外野手補強を新外国人選手で…という構想は変わっていません。今季は近本、中野、島田、佐藤輝、糸原…と続く左打者偏重の打線で、左腕投手に10連敗を喫することもありました。左腕攻略のためにも右打者の補強は大事ですね。ドラフト1位に右の強打者、森下翔太外野手(22)=中大=を指名したのも、チームのウイークポイントを埋める戦略のひとつでしょう。

手詰まり感のある外国人補強の〝窮余の一策〟はあります。それは国内の他球団からFAとなった選手達です。例えば8日に巨人を自由契約になったウィーラー内野手(35)。今季はポランコ、ウォーカーの加入で1軍の出場機会が奪われ、わずか30試合の出場で打率1割9分6厘、2本塁打、5打点に終わりましたが、昨季は121試合に出場し、打率2割8分9厘、15本塁打、56打点です。得点圏打率3割4分6厘と勝負強さも発揮していました。今季も2軍で出場し続けていて、まだまだ体は動けています。

ウィーラーは楽天で5シーズン、巨人で3シーズンを過ごしました。来季1軍で結果を出せば、再来年は野球協約第82条による「FA権の取得で日本人枠」になります。ベンチでも明るいムードを発揮し、チームを引っ張っていくタイプです。今季年俸は1億1千万円です。球団の財布に〝優しい〟選手です。過去8シーズンの成績を見る限り、大外れもないでしょう。未知数の新外国人に2億円を支払うのならば、〝保険〟として獲得する手もあるでしょう。登録は内野手ですが、甲子園球場の試合でも左翼を守っていました。守備もそんなに下手ではないですね。

さらに、ソフトバンクがもしグラシアル内野手をリリースするのならば、調査を進めてもいいのでは…。今季は99試合に出場して打率2割7分1厘、7本塁打、30打点でした。故障が多くなっていますが、まだまだ活躍できそうな気配を感じます。

現在の阪神球団の外国人選手のリストの中身はおおよそ想像できます。そこのレベルとの比較論で見るならば、ウィーラー&グラシアルは十分にアリだと思いますが、どうでしょう。

【プロフィル】植村徹也(うえむら・てつや) 1990(平成2)年入社。サンケイスポーツ記者として阪神担当一筋。運動部長、局次長、編集局長、サンスポ特別記者、サンスポ代表補佐を経て産経新聞特別記者。阪神・野村克也監督招聘(しょうへい)、星野仙一監督招聘を連続スクープ。

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