お金払ってでも回避?PTA業務の外注化が問うもの

KNT-CTホールディングスが始めた「PTA業務アウトソーシングサービス」のHP
KNT-CTホールディングスが始めた「PTA業務アウトソーシングサービス」のHP

共働きの増加などで保護者に敬遠されがちなPTA業務を外注する動きが広がっている。ニーズに応じたマッチングサービスが人気を集め、今夏には大手企業も同種事業に参入した。会合や行事の手伝いなどの負担から「係の押し付け合い」などが常態化する一方、保護者にしか果たせない役割もあり、安易な外注を懸念する声もある。

「プロに頼んで正解」

兵庫県姫路市立荒川小PTAは、毎年作成していた校区内の危険な場所を示す「こども安全マップ」を、昨年度からプロのデザイナーに外注。地域の危険な交差点や不審者が目撃された場所、緊急時に子供が逃げ込める場所がアイコンで表示されており、「子供が一目見て内容がわかる。プロに頼んで正解だった」と三木貞徳会長(45)は話す。

それまではPTA役員がパソコンを使い、前年度版のマップを修正する形で作成していた。完成度は各役員の技量に左右され、膨大な時間を要する人も。三木さんは「今後は安心してマップが用意できる」と胸をなでおろす。

約700団体が登録

外注の際、活用したのはPTA支援サービス「PTA’S(ピータス)」。書記業務や行事運営支援などを請け負う60社と、PTAをつなぐマッチングプラットフォームだ。運営会社の増島佐和子代表(51)によると、2年前の運用開始当初は利用が伸び悩んだが、その後急増。現在、登録するPTAは約700団体に上る。

「以前は外注に罪悪感を持つPTAが多かったが、認知が進んだのでは」と増島さん。自身もPTA副会長を務めた経験があり、「保護者の負担を減らして、参加しやすいPTAになれば」と願う一方、全業務の外注を相談してきたPTAもあったことから「保護者でなければできない活動もあるのに」と懸念も示す。

大手も参入する。近畿日本ツーリストを傘下に持つKNT―CTホールディングス(東京)は今年8月、PTA業務のアウトソーシングサービスに乗り出した。人材派遣業や印刷業など多様なグループ会社を抱える強みを生かし、広報紙の印刷や発送、PTA専用ウェブサイトの開設などを請け負うという。

2カ月で問い合わせは80件超。KNTの担当者は「今まで旅行分野でしか学校に関われなかったが、グループ全体のリソース(能力)で負担を軽減したい」と意気込む。

業務スリム化で本来の活動に

PTAを学校運営のパートナーと位置づけた結果、PTA活動が活性化した例もある。神戸市立本多聞中(同市垂水区)PTAは平成26年から、負担が大きい広報紙の発行を取りやめるなど、業務のスリム化を模索。広報や庶務などに細分化されていた各委員会も廃止し、活動を全面的に見直した。

一方、PTAが校長と毎月意見交換をする「運営委員会」を新設。これを通じて、体育大会の練習のために登校する際は体操服を着ての登校を認めてもらったり、内申点など評価方法に関わる説明会を開いてもらったりするなど、PTAの声が学校運営に反映されたという。

本来、PTA活動の目的は、家庭と学校、地域を結び、子供の健全な育成を図ることだ。本多聞中で教頭、校長時代にPTAとともに学校改革に取り組んだ兵庫県川西市教育委員会の福本靖参事(60)は「保護者と学校が両輪で学校運営にあたり、現場の課題解決のヒントをいくつももらった」と振り返る。業務の外注化には慎重な立場で、「まずは『その活動は本当に子供のために必要か』を検証すべきではないか」と話した。

PTA活動に詳しい大阪教育大の小崎恭弘教授(保育学)は「共働き世帯の増加で社会の価値観も変化し、従来のPTA活動では対応できなくなっている。子供を守り育てる上では学校や保護者など、さまざまな力が必要。一部を外注に頼り、無理なく活動継続するのも一つの考え方だ」と話した。

全国組織から離脱の動きも

PTAは、全都道府県と一部の政令指定都市の計64団体が加入し、傘下に約800万人を抱える公益社団法人「日本PTA全国協議会」(日P)を頂点としたピラミッド型の組織だ。だが、全国組織加入にメリットが見いだせないとして離脱する動きも出ている。

東京都内の一部公立小のPTAでつくる東京都小学校PTA協議会(都小P)は今年7月、来年3月末での日Pからの退会を決定。年会費の使途に納得できる説明がないことや、会員の声を集約したり、会員間の交流を深める姿勢がみられないことなどが理由だ。都道府県や政令市のPTA組織の退会決定は全国初で、内部では他の道府県組織とのつながりが失われることなどへの懸念もあったという。

京都市立小中などのPTAでつくる京都市PTA連絡協議会も同様の理由から退会を検討。理事会で反対多数となり見送ったが、全国の会員から年会費約8千万円を集める日Pのあり方を問う動きとなった。

日Pの担当者は産経新聞の取材に「各PTA協議会へは説明を重ねており、動揺は広がっていない。PTAを取り巻くさまざまな問題を解決できるよう、情報発信を充実させていく」とした。(木ノ下めぐみ)

PTA ペアレント(親)、ティーチャー(教員)、アソシエーション(組織)の略。昭和21年、終戦後の民主化のために派遣された米国教育使節団が、父母と教員が協力して団体活動を行うことを勧める報告書を発表し、文部省(現文部科学省)の指導で全国各地に作られた。27年に全国組織「日本PTA」が発足し、後に公益社団法人「日本PTA全国協議会」に改編された。


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