「ずっとみなさんを待っていました」。ウクライナが奪還した南部ヘルソン州の州都ヘルソンでは、市民が軍車両に乗った兵士を囲んだ。市近郊の村では、花束を渡して涙ながらに歓迎。人々は「ウクライナに栄光あれ」と叫び声を上げ、ロシアの支配から解放された喜びをかみしめた。11日、交流サイト(SNS)に動画が多数投稿された。
ウクライナ軍はフェイスブックに市内の動画を投稿した。青と黄色のウクライナ国旗がはためく広場で、州特産のスイカを贈られた兵士が大勢の市民に敬礼。兵士はヘルメットに付けていた国旗柄のワッペンを外し「われわれの未来のために」と居合わせた赤ちゃんの胸に貼り付けた。口笛や車のクラクションも鳴り響き、侵攻直後の3月に制圧された町に再び笑顔があふれた。
ウクライナ軍特殊部隊がヘルソン入り 「この日を待ち望んでいた」
完全掌握に着手
州都を奪還したウクライナは12日、完全掌握に着手した。市内に潜伏している可能性があるロシア兵やロシアの協力者を捜索し、投降も呼びかけている。ウクライナ国家警察のクリメンコ長官は11日、地域安定化のため「クリーニング」活動を始めたと表明、市民に情報提供を募り、完了まで数週間かかるとの見通しを示した。
ゼレンスキー大統領は11日夜のビデオ演説で「占領者が残した多数の地雷や爆発物を除去する」と言明。警察や救助隊、技術者が現地に入り、インフラ復旧など住民生活の再建に全力を挙げると強調した。
ヘルソンでは電気やガス、水道の供給が止まり、携帯電話もつながらない状態で、ロシア軍が退却時にインフラを使用不能にする「焦土作戦」に出たとみられる。米宇宙技術企業マクサー・テクノロジーズは11日、ヘルソン州にあるカホフカ水力発電所のダムの一部が損壊した衛星画像を公開した。(共同)