母乳ケアや子育て指導を続けている80歳の現役助産師がいる。福岡市で母乳育児コンサルタントを営む平田喜代美氏は「おっぱい先生」と親しまれ、支援施設の開業以来、ケアをしてきた母親は3万5千人以上に上る。近年はユーチューバーとして、不妊治療の現状や夫婦関係が円満にいくコツなどを発信し、日本が直面する少子化に助産師の立場から立ち向かう。平田氏は「子育てが楽しいと思えることが少子化対策の原点」と話し、今も活動の幅を広げている。
平田氏が母乳支援の拠点「平田母乳育児コンサルタント」(通称・おっぱい110番)を開業したのは昭和56年。乳腺炎で乳房が腫れ上がるなど母乳トラブルに苦しむ人の助けになりたいと、痛くないマッサージ技術を習得し、独立した。「子供がおっぱいを飲んでくれない」と悩む母親がケアを受けて育児を楽しめるようになり、「母乳には母性を育て、親子の絆を強める力がある」と確信した。
育児相談にも応じ、平成4年からは、しつけや料理の知識を伝える「育児大学講座」を開講。今年もオンラインで開催した。結婚しない若者や夫婦関係の悪化を憂慮し、婚活パーティーや夫婦を招いたイベントも催してきたほか、妊娠、出産から健康づくりまで幅広い情報を発信しようとユーチューバーにもなった。大人のための性教育として男女の性に関することも積極的に話している。
子育て中の親には和食中心の食事や、神話など日本人が継承してきたことを大切にするよう促す。「母親は家の中の太陽であり、天照大御神にならないといけない」と諭し、子供が健やかに育つよう、食事指導には特に気を配る。
6日には、平田氏の傘寿と開業40年の祝賀会が福岡市内で開かれ、指導を受けた母親ら関係者が集まった。祝辞を述べた松尾新吾・九州電力特別顧問は「実行力の塊のような方で、私もファンの一人。日本をまっとうな国にする信念と、赤ちゃんがすくすく育つ環境をつくりたいという情熱がある」とたたえた。
平田氏は「おっぱいや子育てがうまくいけば、女性は次の子供を産みたいという気持ちが沸き上がる。そろそろ引退と思うが、悲痛な悩みを抱える母親が後を絶たない。手助けを必要とする人がいる限り、頑張らないといけない」と現役続行に意欲を見せている。(一居真由子)