先端医学たずねて1万3000キロ セネガル人留学生 関西医大で研究

セネガルから留学中のンジャイ・レオン・アマスさん(中央)。伊藤量基教授(右)と佐竹敦志講師らが指導する=大阪府枚方市
セネガルから留学中のンジャイ・レオン・アマスさん(中央)。伊藤量基教授(右)と佐竹敦志講師らが指導する=大阪府枚方市

アフリカ・セネガル共和国からの医学留学生、ンジャイ・レオン・アマスさん(37)が、大阪府枚方市の関西医科大学大学院医学研究科で研究生活をスタートさせた。アフリカ大陸最西端の国に家族を残し、アジア最東端の地で4年間、免疫学につながる基礎医学の研究に取り組む。レオンさんは「日本の最先端の知見を持ち帰り、セネガルの医学研究と地域医療の発展に貢献したい」と意気込んでいる。

家族離れ4年間

レオンさんは、フランス語圏のアフリカ諸国の大学で最も権威のあるシェイク・アンタ・ジョップ大学(通称・ダカール大学)を卒業し、大学付属病院に勤務する研究医で、マラリア熱などの感染症学が専門。

関西医大が今秋スタートさせた国際大学院プログラムの第1期生7人のうち、同大が学費や生活費などをフルサポートする留学生の1人に選ばれ、9月に来日。枚方キャンパスのシンボルでもある関医タワー(高さ約115メートル)の国際寮で生活している。

レオンさんはこれまでフランスのボルドー大学ISPEDで疫学研究に従事、イタリアのシエナ大学でもワクチンと医薬品などを学んだ。

「日本は研究力が高く、世界的に評価されている関西医大は私の研究目的に合致している」として今回の日本留学を志願した。

セネガルと日本は直線距離で約1万3千キロ。パリ経由で20時間ほどかかる。4年間の海外生活は決して短くないが、家族らはレオンさんを誇りに思い、喜んでくれたという。

母国の未来考え

来日して2カ月余り。「日本は平和な国なので心配は何もなかった。空港に着いたときから、人々はフレンドリーで礼儀正しく互いに尊敬しあっていると感じた。日本で生活していく上で、私にとっても大変重要なポイントになると思う」

関西医大では、新たな知見で世界的に注目が高まっている免疫学の基礎研究に取り組みたいと考えており、「自国でワクチン製造や臓器移植の道を切り開きたい。高等教育機関でも教えたい」と自らの将来像を描いている。

レオンさんを指導する内科学第一講座の佐竹敦志講師は「来日してすぐなのに研究に入るためのテストを早く受けたいと申し出るなどモチベーションが高く、期待している」と話す。

たこ焼き挑戦⁈

国際寮では各国の学生が自国の料理を披露するなどして交流を深めている。

伊藤量基主任教授は「せっかく大阪に来たのだから、たこ焼きの作り方を覚えればいい。ネーティブの大阪弁も教えるよ」とレオンさんに気さくに声をかけてコミュニケーションをとっている。

日本とセネガルの時差は9時間。レオンさんは毎日午後10~11時になると、スマートフォンのビデオ通話アプリで家族に連絡する。周囲から8歳と2歳の娘の話を振られると表情を緩め、優しいパパの一面をのぞかせる。日本語では子供などにつける「ちゃん」と敬称の「さん」の違いも覚えたという。

レオンさんは「最先端の知見にふれられる環境を与えてもらい、関西医大に感謝している。セネガルの医学研究・開発の発展、日本とセネガルの交流が末永く続くよう力を尽くしたい」と話している。

高度人材、日本との懸け橋に

関西医大とセネガルの交流は、2019年6月のG20大阪サミットがきっかけとなった。

サミット出席のため来日中のマッキー・サル大統領が、1970年代からセネガルとの親善活動を続けている同国名誉領事の井上一成氏(元郵政相)の紹介で、関西医大の友田幸一学長らに面会。

91年にセネガルの農村に完成したクリニックで無料診療にあたったのが関西医大出身の医師だった縁もあり、昨年4月、同大とシェイク・アンタ・ジョップ大の間で学術交流協定が結ばれ、初の医学留学生としてレオンさんが来日した。

関西医大はこれまでも海外9カ国の13大学・病院と交換留学に取り組んできた。

今年9月に開講した国際大学院プログラムは、より積極的に途上国から留学生を受け入れるのが目的。大学が学費や生活費などをフルサポートする関西医大(KMU)プログラムと、国費留学に準ずる文科省(MEXT)プログラムからなり、毎年8人を新規で受け入れていく計画だ。

友田学長は「われわれの医学教育、医学研究、医療技術を提供することはそのまま国際貢献になる。母国の発展に資する高度な人材を育て日本での生活を通して文化にも触れ、日本との懸け橋となる役割も期待したい」と話している。(守田順一)

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