旧統一教会への質問権、不法行為認定の判決が決め手

記者会見する永岡文科相=11日午前、文科省
記者会見する永岡文科相=11日午前、文科省

世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の組織的不法行為などを認定した民事判決22件は、永岡桂子文部科学相が11日、「質問権」の行使を決断する決め手となった。

「信者であることを秘して勧誘を受けて入信させられ、多額の献金を強いられた」などと、元信者が教団などに約4200万円の損害賠償を求めた裁判では、平成29年に東京地裁が信者らの不法行為を認定。勧誘に教義が利用されたことなどから旧統一教会の使用者責任を認め、約1千万円の支払いを命じた。同年12月の2審判決は「教団自身が行った不法行為」と踏み込み、賠償額も約140万円増額した。

女性信者の元夫が「妻に無断で金を引き出され多額の献金をさせられた」として教団に約1億円の損害賠償を求めた裁判では、東京地裁が28年、献金が元夫の財産を原資としたものであると教団が認識していたなどと組織的不法行為を認め、約3400万円の賠償を命じた。

一方、今後の調査では、信教の自由に配慮する必要があり、「どこまでできるかはわからない」(文部科学省幹部)のが本音だ。文化庁は文書のやり取りに加え、必要に応じて口頭で質問することを想定。旧統一教会の代表や幹部を対象に、民事判決の事実関係や組織概要、財務状況などを確認する。担当者は「持っている情報はそんなにない」と漏らしており、調査で内容を充実させたいところだ。

ただ、宗教法人法は質問権行使に際し、宗教上の特性や慣習を尊重することを求めている。例えば金額や関係者など献金被害の外形的な実態把握のための質問は可能とみられるが、「教義に照らした献金の性格」「献金の最終的な使途」などは宗教的内容に踏み込むことになり、法律の趣旨に抵触する可能性がある。

調査前には、質問内容に各質問が必要な理由を添えて宗教法人審議会に諮問。審議会では法律に基づく検討が行われ、文化庁は審議会の指摘を踏まえた質問を実施する。質問の都度、改めて審議会に意見を仰ぐ必要もあり、旧統一教会から一度で〝満額回答〟が来れば、迅速な調査終了が見えてくるが、質問が複数回になれば時間を要する。

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