サッカー代表を支える人

㊤ 専属シェフ 西芳照さん(60) 海外同行200回 百戦錬磨の腕

報道陣のため、選手に人気のペペロンチーノを「ライブクッキング」でつくる西芳照シェフ=8月30日、福島県いわき市
報道陣のため、選手に人気のペペロンチーノを「ライブクッキング」でつくる西芳照シェフ=8月30日、福島県いわき市

サッカー日本代表の選手とスタッフ総勢約50人の胃袋を預かるのは、福島県内でレストランを経営する西芳照さん(60)だ。出身地の福島県にあるトレーニング施設、Jヴィレッジで総料理長を務めた縁で、2006年ワールドカップ(W杯)ドイツ大会から5大会連続で専属シェフとして同行する。

過去200回以上の海外遠征を経験し、カタールでは11年アジア・カップで日本の優勝を支えた。イスラム教の国家には、ビタミンB1を豊富に含み疲労回復効果が期待できる豚肉が持ち込めない。百戦錬磨の達人は「ノープロブレム」と意に介さない。今回は鶏肉と牛肉のほか羊肉も用意。栄養価の高いレバーを使ったメニューを多くして、彩り豊かな食卓を作る。

こだわりは、選手の目の前で調理する「ライブクッキング」。カセットコンロをホテルに持ち込み、一人一人の好みに合わせて、パスタやオムレツを仕上げていく。視覚、嗅覚、聴覚を刺激し、極度の緊張状態が続くW杯期間中も選手の食欲をかきたて、体調を維持してもらう狙いがある。

代表活動中は午前6時には調理場に入り、眠りにつくのは深夜になる。「西さんのおかげで勝てたよ」の一言を励みに、過酷で孤独な仕事を全うしてきた。

還暦を迎え、今大会を最後に日本代表の専属シェフから退くつもりでいる。「選手同士が料理を取りながら、戦術について話し合う光景を何度も見てきた。いい雰囲気、勝つための会話ができる食事会場にできれば」。選手が力を出し切ることを願い、寝る間を惜しんで腕をふるう。(川峯千尋)

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