経済♯word

#つなぎ国債 防衛費財源で発行検討

令和5年度の予算編成に向け、防衛費増額の議論が白熱している。焦点の一つはその財源だ。赤字国債の発行は既に主要先進国で最悪水準の財政をさらに悪化させるため、将来的に増税などで返済する「つなぎ国債」の発行案が浮上した。国民生活や経済の安定と防衛力の強化を両立することが求められる中、今後5年間で40兆円超とされる巨額予算の確保のため、政府・与党は頭を悩ませている。

■5年間で40兆円超

「政府全体の資源と能力を総合的かつ効率的に活用し、総合的な防衛体制の強化を検討する。必要となる防衛力の内容の検討、予算規模の把握、財源の確保を一体的かつ強力に進める」

9月30日に開かれた防衛費のあり方や財源などを話し合う有識者会議(座長・佐々江賢一郎元外務次官)の初会合。岸田文雄首相はこう力を込め、防衛力の抜本的強化へ方針を示した。

ロシアによるウクライナ侵攻や台湾情勢の緊迫化など、安全保障環境は厳しさを増す。6月策定の経済財政運営指針「骨太の方針」は、防衛費について、北大西洋条約機構(NATO)が国内総生産(GDP)比2%以上の支出を求めていると例示。政府はこれまでGDP比1%程度にとどめてきた予算を積み増し、5年以内にNATO水準を達成するよう目指している。

2%なら10兆円超の予算が必要だ。5年かけて段階的に引き上げた場合、防衛費は令和9年度までの総額40兆円を超える。だが、すぐに十分な財源を確保するのは難しいため、政府は当面の手段として特定の歳入確保を法律で担保する「つなぎ国債」を検討する。国の借金であることに変わりはないが、事後的に増税や歳出削減などで財源を確保し、財政規律を維持する。

■震災復興でも発行

過去にも湾岸戦争で多国籍軍の支援金を調達するためつなぎ国債の「臨時特別公債」を発行し、法人税と石油税の臨時増税で財源を確保した。東日本大震災の復興事業でも用いられ、所得税や法人税への上乗せ増税を財源にした例がある。

今回は何を将来の返済資金に充てるのか。有力視されるのが、税収が大きい基幹3税の一つである法人税だ。物価高に苦しむ家計に大きな痛みが及ぶ消費税や所得税の引き上げには慎重論が強く、自民党関係者は「今は大手企業を中心にものすごく内部留保が増えている。つなぎ国債の償還財源では、法人税がふさわしいのではないか」と話す。

昨年度、企業の「内部留保」に当たる利益剰余金は初めて500兆円を超え、10年連続で最大を更新。また、新型コロナウイルス禍からの経済再開に伴う企業業績の回復で、法人税収は前年度比21・4%増の13兆6428億円に上った。

三菱UFJリサーチ&コンサルティングの小林真一郎主席研究員は「当初の想定より税収が大幅に上振れている。家計か企業かのどちらかでいえば、企業のほうに余裕がありそうだという選択だ。政府も国民全体に説明するより、対象を企業に絞ったほうが納得してもらいやすいとの狙いがあるのだろう」と分析する。

■理解を得られるか

ただ、経済界は法人税増税を強く警戒する。経団連の十倉雅和会長は10月17日の記者会見で「法人税だけが先行して議論されるのはいかがなものか」と懸念を表明。防衛財源では、消費税増税なども検討対象とすべきだとの考えを示した。

湾岸戦争時の資金拠出を経済界が納得したのは、日本が原油調達を依存する中東との関係維持が日本企業にとっても死活問題だったからだ。今回も増税を求めるなら、防衛費の増額が企業活動にとって必要なことだと理解を得る必要がある。

小林氏は、防衛力の強化で有事の懸念が和らげば、企業活動が安定し、対応コストを省ける利点もあると説明。「税率が少し上がるだけなら、企業にとっては安心を買う〝保険〟のようなもの」だと、目に見えないプラス効果を指摘する。

会員限定記事会員サービス詳細