留学生と企業つなぐ研修 ニーズ把握手助け 横浜

カードゲームを使った研修に取り組む参加者ら=10月、横浜市西区
カードゲームを使った研修に取り組む参加者ら=10月、横浜市西区

外国人留学生と人材の受け入れ企業をつなぐユニークな研修を横浜市内のスタートアップ(新興企業)が実施している。人手不足が深刻な地元の中堅企業だけでなく、大企業も参加。企業側にとっては大学院などで学んだ留学生は高度人材としての期待が高く、関係構築に加え、職場環境に関するニーズも把握して受け入れ体制を整備する狙いがある。言語の壁や生活環境の違いなどを越えた職場づくりが国際交流が盛んな横浜から広がりつつある。(高木克聡)

「ルールを覚えたら、もう説明書は見てはいけません。ゲーム中は一切しゃべってはいけません」

10月中旬、横浜市西区のオーシャンゲートみなとみらいの会議室。研修を実施している同区のスタートアップ「An―Nahal(アンナハル)」の品川優社長(32)が指示を出すと、テーブルを囲んだ数人の外国人留学生と企業の採用担当者らは黙々とカードゲームを始めた。

手持ちから一番強いカードを出した人が他人のカードを取るが、カードの強さには1度では覚えられない複雑なルールが決められている。勝敗について話し合いができない中で表情や身ぶり手ぶりで自分の考えを押し通したり、多数決で決めたりするなどの意思決定が展開され、それに伴う戸惑いを体感してもらうプログラムだ。

企業側にとっては当たり前の風土、職場の雰囲気であっても、外国人留学生にとっては働きにくさの要因になりうることを学び、柔軟性も養ってもらう狙いがある。品川社長は「海外人材を受け入れるにはルールを明文化した上で、意見しやすい仕組み作りが重要だ」と指摘する。

研修は9月から4カ月間開かれ、企業の担当者と外国人留学生の10人超が参加。企業側の顔ぶれは電機メーカーや飲料メーカーなど海外人材が豊富な大企業、地元企業も含まれる。

参加した市内の建設会社には10月からベトナム人の大卒エンジニアが2人入社した。建設業界は現場監督などの高度人材も不足しており、関連の資格取得を目指す海外人材の受け入れが不可避になっている。担当者は「アパート探し、語学のオンライン学習のためのネット回線の整備など住環境で苦労した」と振り返り、研修を通じて「コミュニケーションの重要性が分かった」と話す。

外国人留学生にとっては将来の就職面接の練習も兼ねる。今春、新型コロナウイルス禍でパキスタンから半年遅れの来日を果たした東海大大学院のラザ・アリさん(23)は「日本語と就職活動の勉強に役立てたい」と研修に参加。「電気電子工学を学んで日本の電機メーカーに就職したい」と意気込む。

会員限定記事会員サービス詳細